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2012.01.29
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カテゴリ:生物学
 

kawanobu日記/『破壊する創造者』を読む(第5話):遺伝子を他種に移動させるウイルスとウミウシ;ジャンル=生物学 画像1

 

kawanobu日記/『破壊する創造者』を読む(第5話):遺伝子を他種に移動させるウイルスとウミウシ;ジャンル=生物学 画像2

 

kawanobu日記/『破壊する創造者』を読む(第5話):遺伝子を他種に移動させるウイルスとウミウシ;ジャンル=生物学 画像3


 第1回日記で、我々ヒトのゲノムにレトロウイルス由来と思われる塩基配列が43%もあると述べた。当然、我々が進化してくる過程で、それこそ何万、ひょっとすると何百万回ものレトロウイルスからの攻撃を受けたであろう。

◎自由に遺伝子を切り貼りして進化に関与か
 そしてウイルスは、攻撃を耐えて生き残った個体のゲノムに首尾良く入り込んで、ヒトのゲノムと一体化する(むろん我々に最も近いチンパンジーにも)。しかしウイルスの中には、時にはヒトのゲノムから再び飛び出したり、位置を変えたり、ある領域ごとごっそり切り貼りしたりするものもいる。
 それによって、我々の形態をコードする遺伝子が改変されることもありえる。著者ライアンは、これが我々を--もちろん他のあらゆる動植物も--進化させたに違いない、と述べる。レトロウイルスの振る舞いを見ると、リブパブリもきっとそうに違いない、と考える。
 ただ残念ながら、具体的にそれでどこが、どのように変わったかまでは、まだ分からない。

◎もし直立二足歩行を決定する遺伝子が操作されたら
 例えばヒトをヒトたらしめているのは直立二足歩行だが、それには骨盤の形態が直立二足歩行向きに変わらなければならない。もしその形態を決めている遺伝子領域に大きな変異を起こすウイルスとの共存進化があったとすれば、そうした変化は数万世代といわず、たった数世代で大きく変化したかもしれない。
 もちろん有害な変異は、自然淘汰の篩いにかかって除かれる。しかし新たなニッチェの獲得などで有利であるか、あるいは良くも悪くもない中立的な変異であれば、個体群に次第に広がり、ついに従来からの種と生態的・生殖的に隔離されて種分化が起こる。前者であれば自然淘汰で、後者であれば偶然による遺伝的浮動で、種分化が起こる。
 進化とは、ダーウィン的な単純な突然変異による自然淘汰だけでは説明しきれないという視点は、新鮮そのものである。

◎動物なのに光合成をする「エリシア・クロロティカ」
 さて、ウイルスが新種形成に関与したであろうすごく魅惑的な例が、本書の冒頭に紹介されている。レトロウイルスが、界を超えた異種生物間で進化を起こさせたというのである。
 北米の東海岸の海浜湿地に棲む「エリシア・クロロティカ(Elysia chlorotica」(写真=全身も緑のエリシア三態。は、権威ある科学誌『PNAS(アメリカ科学アカデミー紀要)』の表紙を飾ったエリシア)というウミウシの仲間がそれである。彼らは早春に孵化すると、幼生は周囲を泳ぎ回って、ある藻類を見つけるとそこに付着する。幼生は、そこで変態を完成させ、小さなウミウシになる。
 エリシア・クロロティカは、居付いていたその藻類を猛烈に食べ始める。そして藻類に共生していた葉緑体を吸い出し、自分の体の中に取り込む。やがて葉緑体が、エリシアの体表全体に行き渡ると、もはや用はないとばかりに、自らの口を閉鎖してしまう。
 なぜなら体表に行き渡らせた葉緑体が、太陽光を浴びてたっぷりとエリシアのエネルギー源を生み出してくれるからだ。

◎葉緑体の遺伝子の一部がエリシアに移転
 エリシアは動物なのに、植物体のように変わったのだ。光合成をする褐虫藻と共生するサンゴと同じだ。なお念のために言っておくと、サンゴは、刺胞動物門に属する動物の仲間である。
 さてエリシアに取り込まれた葉緑体は、光合成で自分でエネルギーを得ているけれども、分裂などで体を構成するたんぱく質は必要だ。元の藻類に共生していた時は、たんぱく質合成のための遺伝子を一部、藻類のゲノムに移転してしまっていた。新たな宿主になったエリシアには、そんなものはないはずだ。
 ところが、あったのである。何と藻類に共生していた葉緑体のたんぱく質合成をコードする遺伝子が、エリシアの染色体ゲノムに移転されていたのだ。おそらく後述のレトロウイルスが関与したものだろう。植物界の藻類から動物界のウミウシに遺伝子を平行移動させているという離れ業--ウイルスよ、お主もなかなかやるのう、と呻ってしまった。

◎温和しかったレトロウイルスが用済みの親を突如として攻撃
 話は、ここで終わらない。他個体と交接して(エリシアは雌雄同体なので、オス、メスの区別はない)有性生殖という遺伝子組み替えを済ませると、エリシアは越冬して早春に向けて産卵する。
 生物体とは遺伝子の納まる「箱」に過ぎないので、産卵が終わって次の世代に遺伝子が渡されたら、もう「親」個体は用済みだ。すると、何という不思議か、「親」は突然、病気に犯され、全滅してしまう。
 親エリシアを攻撃したのは、藻類の染色体から葉緑体のたんぱく質コード遺伝子を移転させたと思われるレトロウイルスである。それまで幼生から生長過程を通じて、エリシアの染色体の中に「プロウイルス」としとて潜んでいたウイルスが、産卵が終わった宿主個体を突然攻撃して、死に至らしめるのだ。まるで、もう用はない、邪魔だから死ね、と言わんばかりである。
 かくてエリシア・クロロティカの世代交代は、この内在性ウイルスのおかげで滞りなく終わるのである。

☆これまでの「『破壊する創造者』を読む」シリーズ
▼12年1月27日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第4話):鳥インフルエンザはパンデミックを起こさない!?」
▼12年1月25日付日記:「『破壊する創造者』を読む(第3話):サルと平和的に共生していたHIV」
▼12年1月23日付日記:『破壊する創造者』を読む(第2話):共生者としてのレトロウイルス」
▼12年1月20日付日記:「ウイルス像を一変させる刺激的書物『破壊する創造者』を読む(第1話)」

昨年の今日の日記:「巨額債務国家日本のもう1つの途、はたしてそれで幸せか?」






Last updated  2012.01.29 06:28:19



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