アクスムの「新シオンの聖マリア教会」の敷地には、高さ10数メートルにも達するジャカランダの大木が植わっていて、紫の花をたくさんつけていた(写真)。しばらく間が開いてしまったけれども、久々のエチオピア紀行である。第118回を掲載したのが、9月15日だから、ほぼ1カ月ぶりのエチオピア紀行である(「エチオピア紀行(118):アクスムに林立する奇妙な石塔ステラ(オベリスク)の数奇な物語」を参照)。
◎ジャガランダの花に大喜び
僕たちのツアーの大半を占める秘境オタクのおばさんたちは、ステラや新シオンの聖マリア教会よりもこちらの方を喜んでいた。
ステラに興奮するのは、僕のようなアフリカ考古学オタクだけだろうし、新シオンの聖マリア教会はキリスト教史関係者だろうから、無理もない。
よく見ると、ジャカランダの向こう側にステラを模した石のモニュメントが建っている(写真)。しかし本物に比べると、薄っぺらさは覆いようもない。
◎「シオンの聖マリア教会」はサブサハラ最古の教会
さて新シオンの聖マリア教会の教会である(下の写真の上)。
「新」とあるように実は、元からある古い「シオンの聖マリア教会」も隣にある(下の写真の下)。こちらはムスリム占領期に1度破壊されるが、紀元4世紀前半にエザナ王とサイザナ王によって創建された由緒ある教会である。
前にも述べたが(8月17日付日記:「エチオピア紀行(114):古代アクスム王国の偉業の地へ、いざ一飛び」を参照)、アクスムはエザナ王の時代にキリスト教を受容した。つまりエチオピア最古、サブサハラ最古のキリスト教会なのである。
◎「契約の箱」を収蔵
ここの最大の目玉は、モーゼの十戒が刻まれた石板を収めた箱である「契約の箱」(聖櫃とも言う)が置かれているということだ(写真=古代ユダ王国の王ヨシュアの指導で「契約の箱」がヨルダン川を渡る様子を描いた宗教画)。
むろんそれが事実かは、科学的検討を経ていないので分からない。伝承では、そういうことになっている、というだけだ。
ただ、この教会は女人禁制になっている。したがって僕ら一行14人のうち女性は10人も占めているから大半は観られない。
シオンの聖マリア教会は、17世紀にゴンダール城(写真)を造ったファシリスデス王が再建したが、以来ずっと女人禁制が続いている。
◎新シオンの聖マリア教会は新しくてどうしてもありがたみは薄れる
そこで、女性も礼拝できるようにと、1965年にハイレ=セラシエ皇帝が建てたのが、僕たちが今、訪れようとしている新シオンの聖マリア教会である(写真)。
イタリアやスペインの街でたくさんの古い教会を訪れたが、いずれも数百年の歴史を感じさせる重厚な雰囲気に浸れた。しかし創建たった50年では、ありがたみはどうしても薄くなる。
僕たちは、それでも現地ガイド氏に案内されるままに、靴を脱ぎ、ダニ除けに靴下の上にビニールをかぶせて、新しい教会に入った。
昨年の今日の日記:「エチオピア紀行(74):1月末に行ったエチオピアに非常事態宣言;ラリベラの聖十字架教会へ」