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2021.12.26
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カテゴリ:考古学
​ スウェーデン南部のバルト海に浮かぶエーランド島(地図)東岸に西暦400年頃に建設された鉄器時代の楕円形をした環状要塞跡がある。サンドビーボルグ遺跡という。



​◎石の壁で防御された鉄器時代の環状集落​
​ かつて高さ5メートル以上はあったと思われる石を積み重ねた壁が、今も残る(写真)。​



 ここで、1500年以上前の西暦400年代後半に、身の毛もよだつような惨劇が繰り広げられたことが、近年のスウェーデン、カルマル県博物館の発掘調査で明らかになってきた。
​ 最初は、10年ほど前、考古学者たちがここを試掘し、宝石など貴重品の詰まった穴を多数見つけた。その後2011年にカルマル県博物館の組織的発掘調査で(写真)、男性ばかりの多数の人骨が見つかり、かつて不意の襲撃で大虐殺の行われた容易ならぬ遺跡であることが浮き彫りになってきた。​




​◎大量の遺体と夥しい宝物​
 約5000平方メートルの環状集落内には53基の住居址があり、そのうち3基しか発掘されていないにもかかわらず、住居址や道から26体もの遺骨が発見され、しかもいずれも苛烈な暴力の跡を残していたのだ。さらに特徴的なのは、全員男性で、女性遺体は今のところ1体も見つかっていない。
​ サンドビーボルグで発掘された穴のすべてで、銀製のブローチ、指輪、鈴、コインなどが見つかっており(写真=上は銀製ブローチ、下は銀メッキのペンダント)、中にははるか南のローマからもたらされたものがあるなど、集落が豊かであったことがうかがえる。エーランド島の男たちはローマ帝国の傭兵として働いていたようで、また島のエリートたちは広くローマと交易していたと思われる。こうしたことから、贅沢品やローマのコインが蓄積されたと考えられる。






​◎防御もする間もなかった不意打ちの犠牲者たち​
 そこに、ある深夜(集落の寝込みを襲われたと考えられるので)、何者かによる集団的襲撃が行われた。
 「ハウス40」と命名された住居址では、幼い子ども2人を含む9人の遺骨が発見された。「ハウス4」では首を切り落とされた10代の少年の遺骨が発見され、さらに「ハウス52」では炉の上に横たわる老人の遺体が発見された。老人の骨は激しく殴打されていたうえ、骨盤の周りに焦げ目がついていたことから、炉の火中に投じられた可能性がある。
 襲撃されて殺された遺体は、埋葬されることもなくそのまま放置された。襲撃者たちは財宝を奪うこともなく、現場を引き揚げたようだ。埋葬の跡の無いことから、サンドビーボルグ環状集落のかつての居住者たちはほぼ全員、殺されたと推定される。遺体を埋葬する生き残りは、誰1人いなかったのだ。

​◎女性たちはどこに行った?​
 集落への攻撃が不意打ちだったことは、遺体は鈍器や剣のような鋭い刃物により、上や後ろから攻撃を受けたらしいことから分かる。向き合って武器を避ける時に前腕部で防ごうとするが、そこに外傷はなかった。また惨劇の現場には盾や武器が発見されていないことから、住民たちは身を守る時間・術はなかったと考えられる。
 発掘された犠牲者26体のうち、前述のように女性の遺体は1体もない。集落に女性がいなかったとは考えられないから、襲撃集団によって全員拉致されたと考えられる。
 彼女たちは、襲撃者たちによって慰み者にされたか、外の世界に売り飛ばされたのかもしれない。

​◎宝物漁りのスカベンジャーからの盗掘を免れる​
 こうした遺体と遺物の産状から、スウェーデン、リンネ大学のクララ・アルフスドッター博士は、襲撃者の動機は長年たまった怨念による復讐だった、と学術誌『European Journal of Archaeology』で推定している。襲撃者たちは、現場に留まって夜明けとともに戦利品を探すこともしなかった。
 この皆殺し攻撃で、この地域のパワー・バランスは大きく変わったかもしれない。ローマと交易し、豊かな富を蓄積したサンドビーボルグ環状集落の力は、一夜にして空白化したのだ。
 ヨーロッパ鉄器時代とはそういう時代だったのだが、それでもひときわ残虐なこの大虐殺事件は、この地域で長く語り継がれ、怨念の残るサンドビーボルグ環状集落に侵入して残された宝物を盗掘しよとするスカベンジャーも二の足を踏ませたに違いない。
 それが、現代の考古学者たちに鉄器次第の凶暴な暴力の瞬間を完全に保存した貴重な遺跡をもたらしたのだ。

昨年の今日の日記:「上場延期となったスターリニスト中国のアント・グループと親会社アリババの強大な力に習近平と中国共産党が強い警戒」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202012260000/​





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Last updated  2021.12.26 04:49:22



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