アメリカのウクライナ支援の「惜しみ」でウクライナが敗北すれば、平和のためのツケは天文学的数字に
アメリカのウクライナへの追加支援追加の予算が共和党の抵抗で、議会で通らない。13日に上院では圧倒的多数で可決されたが(写真)、共和党多数の下院は直後に審議をほったらかしにして、2週間の長期休暇に入ってしまった。 NATO主要国のアメリカが、「支援疲れ」でウクライナの苦境を見過ごしているのは、まさにならず者プーチンの望みどおりである。◎このままではファシストに敗北したスペイン内戦の共和国政府の二の舞 そうしたNATOの支援の停滞、いや後退もあり16日、テロ国家ロシアは激戦の続くウクライナ東部ドネツク州のアブデーフカを陥落させた。昨年末からジリジリとウクライナ再侵攻を進めるロシアは、ここで大きなポイントを稼いだ。 「戦争がいつ終わるのか、ウクライナに聞かないでほしい。なぜロシアが侵略戦争を続けられるのか自問してほしい」。アブデーフカ陥落の翌日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、いらだちを込めてミュンヘン安全保障会議で西側諸国首脳に語りかけた。 今、アメリカの共和党と大統領候補が確実なトランプは、ウクライナ支援に多額の支出をしぶっている。今、アメリカからの支援がほぼ無くなり、ウクライナはアメリカ1国よりずっと少ないヨーロッパ諸国からの武器支援で何とか持ちこたえている。しかしそれも限界に達しつつあることは、16日のアブデーフカ陥落で明白になっている。 このままでは、欧米からの支援が止まり、共和国最後の拠点のバルセロナ(写真=希望いっぱいだった1936年のバルセロナの共和政府側の市民軍)が1939年1月にファシスト・フランコ軍に陥落させられたスペイン内戦の再来となる。◎ロシア勝利の場合は東欧、フィンランドがロシア軍と直接対峙に アメリカの共和党が600億ドルにのぼるウクライナ支援をしぶるのは、歴史的に見れば大きな過ちだ。それをケチれば、それは後にアメリカにとって大きなコストとなって跳ね返ってくる。 アメリカ戦争研究所は、昨年12月、ロシアが勝利した場合は、その後のヨーロッパと世界の平和を維持するために天文学的費用がかかってくる、と指摘した。 まずバルト3国を含めた東ヨーロッパとフィンランドは、数千キロメートルに及ぶ国境線沿いにロシア軍と直接、接することになる(地図=ウクライナがロシアとの緩衝地帯になっていることが分かる)。◎ドイツは現行軍事費の一挙に2倍が必要に 西進をうかがうロシア軍に対処するために、NATOは大きな部隊増強を迫られる。NATO諸国は、現行の対GDP比2%未満の国防費を旧ソ連との冷戦期の平均とされた国防費GDP比3.5%の一挙に2倍化が必要になるとみられている。 例えば2024年のGDP比1.39%のドイツの場合、国防費は倍増し、一挙に1000億ドルを大きく超えると見られる。今、アメリカがしぶる対ウクライナ支援額の約2倍だ。 ドイツ1国で、これだけ必要になる。ロシアの最前線となるフィンランド、バルト3国、ポーランド、スロバキア、ルーマニア、モルドヴァを合わせれば、やはりこれくらい増額する必要が生じる。◎プーチン勝利ならスターリニスト中国の勢い強まり日本にも危機が及ぶ さらに危機は、ヨーロッパに限られない。東アジアで、台湾、韓国、日本の国防費は、勢いづくスターリニスト中国と北朝鮮ならず者集団に対処するため、とりわけ侵攻が現実味を増す台湾とそれを防衛するアメリカの費用は甚大になる。 こうしたことを考えれば、600億ドルの支援をしぶる共和党は、世界が見えていないと断ぜざるを得ない。そしてウクライナの運命は、日本にも波及することを僕たちは知るべきでもある。昨年の今日の日記:「テロリスト国家ロシア、ウクライナ侵略開始1年にして、悲惨な内情」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202302220000/