農薬 ~本当の犠牲者~
私は、無農薬の野菜しか購入しませんが、それは、「消費者が求めるから仕方がない」という理由で、農薬を使用しないといけないと主張する生産者が少しでも減ることを願っているからでもあります。農家の健康を守るために。。。「出荷直前まで農薬を散布しないと、1つの虫食いでせっかくの今までの苦労が無駄になる。。。」「見た目が悪いと購入してもらえない。。。」本当は使いたくないし、農薬を危険だとは思うけれど、背に腹は代えられないという生産者がいます。「農薬を使っているから、安定した生産が可能だ」「農薬を使うから大量生産が可能になり、安く販売できる、、、外国産の野菜に対抗するには、コストを削減し、できるだけ安く売る必要がある。。。」農薬の使用に積極的な農家も沢山います。実際に、消費者の多くは、安さ&見た目で農産物を選んでいるのも事実ですが、生産者の思い込みの裏には、そのように思い込ませる製造会社や農協の販売戦略があるのではないでしょうか?農協の作成する防除暦にしたがって、気候・地力などの差を無視して淡々と農薬をまく。農協が作成しているから、防除暦に載せられている農薬は安全に違いない、、、実際は、権威を保持するために、防除暦は、それに従って農薬を使えば、絶対に虫がつかないことに重点をおいて作成されるそうです。そして、自社の農薬を掲載してもらうために激しいメーカーの売り込みもあるのが実態です。防除暦には、農薬の効果は書いてあっても、散布する農薬の危険性について具体的に書かれているわけではありません。農家が農薬の危険性について学ぶ場がないということが、農産物の残留農薬のリスクだけでなく、生産者の健康へのリスクを高めています。例えば、湿度と温度が高くなる時期には、カビと虫の防除をするために、殺菌剤と殺虫剤を自分で混ぜて散布する農家がいます。もともと混合の製品もありますが、自分で調合することは、メーカーも想定外のことです。異なる農薬を自分で調合した場合、化学反応で何が起こるか、、、そのような基本的な危険性の認識がないのは、農家のせいだとばかり言えません。かつて、林野庁は、「除草剤・塩素酸ソーダは食塩と同じ成分で安全」と説明し、安全性を疑問視する住民の前で、管理職が除草剤を飲んでみせたことがあるそうです。(1970年12月29日 全林野新聞)そのような間違った説明、デモンストレーションは各地であり、それにより、農薬の危険性に対する認識が薄れ、安易な使用が広まってしまいました。、現在は毒性の低い農薬が主に使われているにもかかわらず、農薬による中毒事故(自他殺を含まない)は、報告があっただけでも、2005年度で29件(44人)もあります。死亡者数は6人です。平成17年度に発生した農薬中毒事故の集計結果確かに、農薬による中毒事故(自他殺を含まない)は、1957~1960年では、年平均で、死亡45人、中毒681人もいましたが、それらは、農薬の毒性が強かったため、また、一般的にも農薬の危険性に対する意識が低かったためであると思われます。その後、農薬の危険性が明らかになり、毒性の高い農薬は順次急性毒性の低い農薬に切り替えられました。しかし、その切り替えも、メーカーの在庫が底をつくまで、行われないことも多く、メーカーと政府の癒着の問題がここにも出てきます。2005年の中毒の原因を列挙してみます。・マスク・メガネおよび服装などの装備不十分・保管管理不良や泥酔などによる誤飲・誤食・強風や風下での散布や農薬の安易な取り扱い等の本人の不注意・農薬の不正使用・長時間散布による疲労や不健康状態での散布・その他農薬を飲んでも大丈夫なほど安全である、と言いながら、一方で装備の不十分で中毒になる人たちがいる。。。保管の管理不良や農薬の安易な取り扱い、不正使用などは、農薬の安全性をアピールすればするほど増えてしまいます。また、不健康状態など、免疫力の落ちている状態では、危険である。。。農薬散布時の農薬への被爆量は、農産物の残留農薬の比ではありません。「農薬の危険性は残留農薬だけではない」このことの認識が薄いのではないでしょうか。ちなみに、農薬中毒事故のうち、自他殺は2005年度で207件もあります。そのうち死亡件数は129件です。農薬が危険であるという認識が低ければ、その保管もいい加減になる可能性があります。使用期限の切れた農薬、登録の取り消された農薬の処分の方法を尋ねたら、土に撒いてくれと言われたので、山に捨ててきた、、、という農家の話をききました。確かに、土中微生物の分解能力は非常に高いのですが、、、容器の処分にも費用がかかるからと、容器ごと廃棄する農家もあります。散布用の農薬を鍵のかからない仮小屋で保管している農家も沢山います。それらが犯罪目的に使用される危険性を考えると不安になります。毒物・劇物を扱うには、本当ならば資格が必要なはずです。専門の知識がなく農薬を扱うことが可能である、、、このことが良心的な生産者までを悪者にしてしまう原因になりえます。「コスト削減・安定収量のために絶対不可欠」と言われている農薬ですが、実際は農薬を購入するという初期投資が必要になり、また、慣行栽培は有機農法や自然農法と比較して気候変動には弱いことがわかっています。もちろん、今から突然無農薬にしたら、収穫量が激減し、日本の自給率はさらに下がってしまいます。しかし、農薬を使うことを前提にするのではなく、農薬は使わないのがベストだが、どうしてもの時に必要最小限使用する、、、そのことが常識になれば、農薬が引き起こす問題の多くが解決されるのではないでしょうか?農薬の本当の犠牲者は、農薬を使用する農家、そして、工場で農薬の製造に直接関わる人々、、しかしその人々には農薬を使用するメリットもあります。では、本当の本当の犠牲者は?それは、農薬で根絶やしにされる虫やカビや微生物です。私も家庭菜園を少しだけしているので、朝起きたら虫に食べられて一畝が全滅、、、という経験もあります。しかし、あきらめずに様子をみていると、虫に食べられたはずの野菜から新しい芽がでてきて、再び繁茂すると、虫の被害はぐっと減ります。野菜を食べて増えすぎた虫を食べる天敵がどこからかやってきたからかもしれません。また、抗菌グッズや除菌の発想のように、あらゆる菌を殺菌してしまうことには、疑問があります。ミミズのいない大地、、、微生物の減ってしまった大地、、、殺菌剤が打たれた畑では、微生物によって分解されるはずの農薬はどうなるのでしょう?*微生物以外にも、紫外線や雨など他の要因で分解される農薬もあります。利益を追求することが最終的に農業を行き詰らせてしまう、、、化学肥料や灌漑、農薬の使用により捨てられる運命になった土地。。。世界の飢餓を救うための科学的農法が、実は、自然の恵みを失わせる結果になっている。。。経済至上主義をもちこんではいけない分野があるはずです。農薬から見えてくる世界の力関係、、、官軍産の癒着、、、そのあたりもいつか書く日がくるかもしれません。