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2024.01.04
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テーマ:海外生活(7772)
カテゴリ:役立つ英語表現

ペットの後始末を英語で訳そうとしてもなかな的確な役が見当たらない。うまく訳せない時はうまくPhrasal Verb(日本語では句動詞と呼ばれる)で処理してみるとすんなりいくケースが多い。

道を歩いていると以下のような標識に出くわした。


Clean Up After Your Pet、つまり「ペットが歩いた後を片付けろ=あと始末をしろ」となるわけだ。 

「犬のフン」という直接的な表現を避けた美しい婉曲表現(euphemism)ではないだろうか。出会った時に一人で立ち止まって感動してしまった。婉曲表現といえば足が早い食品に使われるperishableという表現を紹介した記事が記憶に新しい。(過去の記事は​こちら​)英語にはこのような婉曲表現が多々存在するのである。

例えば、トイレ(toilet)はあまりに直接すぎるためにrestroomやbathroomが好まれる。ペットのフンはdropping(s)と言われたりするが、フンを「落下物」と呼ぶことも立派な婉曲表現だ。カフェに入って店内が混み合っていたとする。テーブル席が数席空いているが隣には見知らぬ人が座っている。このような状況で”I want to take this seat.”と言うとかなり高圧的な印象を相手に与えてしまう。文法的に誤りは全くないし、意味は通じるが英語圏の人は決してこのような英語を発しないのである。英語圏に一定期間生活したことがある人であれば”Is this seat taken?”/“Is someone sitting here?”/ “Do you mind if I sit here?”と言うだろう。自分が座りたいことを主張する前にこの席の利用状況を周囲の人間に確認するのである。ネイティブが習わずに自然と身につけるサバイバルスキルの一つである。

このような言い回しを研究している学問がPragmatics(語用論、意味論)と呼ばれる分野である。学んでみると非常に面白いのだが、日本の英語教育は残念ながらこの分野まで行き届いていないような気がする。語用論を学んだところでなかなかテストのスコア向上に直結しないため授業内容から切り落とされているようだ。日本の言語教育が無味乾燥で文脈がないと批判されるのはこのような側面を無視し続けたからである気がしてならない。人が言語を生きるために用いてコミュニケーションをとっている以上、Pragmaticsは避けては通れないと私は考えている。

しかし現実に目を向けるとどうだろうか。日本ではテストのスコアによって合否の結果が決まるテスト至上主義の風潮が非常に強い。Pragmatics(語用論)は教育産業のPragmatism(実利主義)によってその価値がかき消されてしまっている。語源は一緒で両者のスペルは非常に似ているが、内包する意味は全く異なる。言語を学ぶ際はその文法、単語がどのような文脈で使われるのか意識してもらいたい。なぜなら言語は文脈のない「真空(vacuum)」では存在できないからだ。

ちなみに住んでいるアパートのキッチンにもこのclean up after〜という表現が使われている。



今日も良い一日を。

きたろう






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最終更新日  2024.01.04 08:04:02
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