2009/03/10(火)22:36
日差しと土とお喋りと、むせるくらいの葉っぱの匂い
英生おじさん、和久おじさん、寿子おばさん、貴美子おばさん…………
おじいちゃんの兄弟姉妹が集まった。
和坊っちゃん、と呼んで、おじいちゃんがいちばん仲良しだった、和久おじさん。
そして、お兄さんの英生おじさん。
みんな私を覚えてくれてて、たくさんお話をした。
私は、博史おじいちゃんが大好きで、いつだっておじいちゃんにくっついてた。
『あんりちゃんよう、かずぼっちゃんとこ行ぐべー』
『おじいちゃん、おさんぽいこー』
おじいちゃん。
おじいちゃん。
大好き。
おじいちゃん、大好き。
何があっても、おじいちゃんはあんりの味方でいてくれた。
そんなおじいちゃんは、兄弟みんな大好きで、おしゃべり大好きで、
近所の皆が大好きで、
お散歩行くと、おしゃべりに夢中になって、なかなか帰って来ないから、
『鉄砲玉』なんて呼ばれてた。
そんなおじいちゃんは、ちびのあんりを連れて、
いつもの白い自転車で、親戚のお家に遊びに連れていってくれた。
本家に、かずぼっちゃんち、ひでおじちゃんち、きみこおばちゃんち。
帰りには、お菓子買ってくれたり、木の実拾いに行ったり、
おじいちゃんは、あんり達に、土の匂いと、お日さまのあったかさを、
いっぱい教えてくれたんだ。
おじいちゃん。
おじいちゃん。
あんりの大好きなおじいちゃん。
春は、梅の花が咲く、かっこうが鳴く、森の中の小川へ。
夏は、蝉が鳴く森へ、カブトムシを探しに。
秋になれば、栗拾いしに山に。
冬は、広いお庭で焚き火をして、じゃがいもを焼いて、釜でうどん茹でてくれた。
暑くて蒸した夏の夕暮れ。
寒い、雪の白さで染まる朝。
庭いじりが大好きなおじいちゃん。
ケイトウ、菊、椿、びわ、ぐみ、あやめ、撫子。
おじいちゃんから、たくさんのお花の名前を教わった。
おじいちゃん。
おじいちゃん。
博史おじいちゃん。
おじいちゃんは、36歳のとき、大好きな美千子おばあちゃんを亡くした。
それから40年間ずっとずっとね、
みちおばあちゃんが大好きだったんだよ。
ねぇ、おじいちゃん。
これから、おじいちゃんは、みちおばあちゃんと一緒なのね。
大好きな大好きなみちおばあちゃんと、やっと会えるのね。
したら、泣いてたら、おじいちゃんいつまでもみちおばあちゃんとこ行けないよ。
あんりが泣いてたら、おじいちゃん、みちおばあちゃんとこ行けないよ……。
おじいちゃん、
あんりね、おじいちゃんにいっぱいいっぱいいろんなこと教わったよ。
あんり、自分の子が生まれたらね、
おじいちゃんに教えてもらったこと、全部伝えるんだ。
そしたらきっと、
おじいちゃんみたいな、明るくて元気で、優しくて一生懸命な子に育つよね。
ね、おじいちゃん………