「ただいまぁ」
最近、僕は疲れきっていた。
いつもなら「おかえりぃ」と息子が玄関まで来てくれる。
その笑顔に救われながらゴールの見えない日々をこなしていました。
この日は一生忘れない…
玄関のドアを開けるといつも明るい部屋が暗闇に包まれ、物音ひとつ聞こえない静けさ…
「ただいま…」
息子が脅かそうとしているんじゃないかと思うしかなかった。
「ただいま」もう一度…
出て来るまで、息子がいつものように出て来るまで…出て来て、頼む。
ふざけても怒らんから…出て来て。
そんな思いは通じるわけがない。
部屋は暗く静かなままだった。
でも電気をつけた僕はほっとした。
ん、いつもとかわらない部屋、家具もあれば洗濯物も干したまま…
「どこか買い物でも行ったかね、びっくりしたわぁ」と心の中でほっとしました。
「ふぅー」とテーブルの椅子に腰掛けながら息が止まっていたかのようにため息をついた。
洗濯物を取り込む。
この時点で心臓は音をたてていたのを覚えています。
洗濯物を取り込んだが他の部屋に行かない自分。行けないんじゃなく、行かない自分。
本当に静かでした。
その静けさが教えてくれる。
妻と息子は買い物なんか行っていないと…
タバコに火を付け立ち上がる。
いつもは部屋でのタバコは注意されるのに…
今何時だろうか…会社を上がったのが確か…17時頃。
一番奥の部屋にとなりのトトロの時計がある。
妻の両親が息子のために買ってくれた掛け時計。
タバコを吸いながら壁を見上げた僕は鳥肌が立った。
僕の時間は止まった…
その部屋は息子の部屋で、トトロの時計が広い壁に掛かっている部屋。
そこにトトロの時計はなかった…
この日は鮮明に覚えている。
何度も夢に出るほど僕の心に強烈に刻まれている。
すれ違いの毎日、自分や家族を犠牲にしてまで強がり、話し合いを避けてきた。
この日は一生忘れません。
幸せの定義その2
弱い自分を素直に見せる