057970 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

Little Butterfly

Little Butterfly

親の反対

さて、ここで少し時をさかのぼって見ようと思います...

私がTと付き合いだしたのは18の夏間近。彼がアメリカ人だということはお母さんは知っていたけど、初めて写真を見せたときに、お母さんはかなり驚いた。

「え~~?黒人じゃん!!」

それからTが家に電話をかけてくると(その頃は携帯なかったので)、お母さんは嫌~な感じ。そして、「黒人と付き合っても幸せにはなれないから別れなさい」ときっぱり言われたりもした。家とTのアパートは目と鼻の先にあったのに、Tが家の両親に会う事は2年以上なかったと思う。

お母さんはTを嫌がる理由は「黒人だから」とは言わなかった。歳が離れてるし~(その頃私は高校生だったので社会人のTとは歳が離れすぎというわけ)とか、アメリカ人だから~とか。でも、私にはわかった。「黒人だから」って理由が一番の問題だったって事。

私とお母さんはとても仲が良くて、小さいときから何でも話し合える仲だった。でも、Tと付き合うようになって、反対されていたから、一番話したかった事を話せなくなってしまった。家ではTの名前を出す事さえタブーだった。

でも私のTへ対する気持ちは日々大きくなっていて、会うたびにもっともっと会いたいと思ったし、帰りたくないと思う日が毎日だった。親に嘘をついてTのアパートに泊まりに行く事も会った。それがバレて、ハタチすぎたというのに正座で説教された事もあった。早く自立したい。早く家を出たい。という気持ちが大きくなっていったけど、私はお父さんの仕事の事情でアメリカにいるから、当然働けるわけもなく、大学卒業するまでは親のすねをかじるしかなかった。

家族とTの間に挟まれて悩む私にTは「家族を大事にしろ」って言ってたっけ。家族は大事なんだ。指一本ではぶち破る事のできない壁も家族が集まってこぶしになればぶち破る事ができる。どんな困難も家族一緒なら打ち勝つ事ができる。家族を大切にしろ。

Tは無理やり私の親に挨拶に来る事はなかった。どう考えても家族がTを受け入れる仕度が整っていない中で私が無理やりTを連れてきても、事が悪化するだけだってTは言った。

Tへの気持ちが募る中、私はもはや、家での家族との生活に耐えられなくなっていた。家族団らんでテレビを見ていても、私の頭はTでいっぱい。でも、その事を家族に話す事ができなかった。一番話したい事だったのに。

ある日、私は爆発した。泣いて泣いて泣いて話をした。このままではいけない。どうしてもTに会ってもらいたい。Tと私のことを認めてもらわなくてもいい。でも、Tのことを何も知らずにただの「黒人」で終わらせてほしくない。と。

両親はTに会うことを承諾した。もともとお父さんは「自分(お父さん)より年上でなければどんな人でもいい」と言っていた人なので、Tに大して反対はそれほどなかった。問題はお母さん。

Tが来た日、お母さんはお茶も出さなかったと思う。うちは両親とも海外生活が長いから普通の日本人よりかは英語がわかる。でも、やっぱり100%理解できるわけではないので、私が通訳として入った。

Tは「二人の関係を認めてもらえなくてもいいです。ただ、僕は娘さんを心から想っていて大事にしているという事だけ、どうしても理解してもらいたい。」って感じの事を私の両親にむかって説明した。(それを自分で通訳するのはかなり照れくさかったな...)

一回目の対面は、なんとなく気まずく終わった。お父さんはただうなずいて、「自分たちでしっかり考えて、責任を持った付き合いをしていくならそれでいいんじゃないか」と言った。お母さんは「もうこれ以上どうする事もできない。お互いそんなに想い合っているのを無理やり引き離す事はできない。」って言うだけだった。

Tが帰ってから私はお母さんともっと話をした。今までTの事をお母さんに話したくても喧嘩になって終わるだけだった。でも、それがどんなに辛かったか、どんなに寂しかったか。そして、何よりも、これまで何でも話し合えたお母さんに、たくさんたくさん秘密を作ってしまった事がわたしにとってどんなに悲しかったかを全部ぶちまけた。お母さんは泣いた。そして、お母さんも私が何も話してくれなくなったことが辛かったと言った。私も泣いた。

それからは、家族にTの話をするのをいつまでもためらったり怯えていたらダメだなって思うようになっていった。家族が興味を持たなくても私から積極的に話そう。そして、時間がかかっても、いつかはTが家族に受け入れてもらえる日が来るはず。それを信じて辛くても、自分の思っている事や考えていた事をどんどん家族と話し合った。

私とTが付き合って、3年、4年経つにつれ、家族にとって私とTが「結婚する」という未来予想図が現実的なものになっていったのだ...
 


© Rakuten Group, Inc.