元ロンドン新(米)所長→現ハノイ所長日記

2011/05/11(水)06:55

“やきもきする”のが苦手になった日本人

以前にも一度紹介したことがあるが、精神科医でベストセラー作家でもある香山リカさんが、週間ダイヤモンドに連載されている「こころの復興で大切なこと」という記事がとても共感できるので、紹介しつつ、思うところを書きたい。 記事:http://diamond.jp/articles/-/12152香山さん曰く、いま「原発鬱」とも呼ぶべき症状が増加している、とのこと。チェルノブイリの事故でも、事故の影響を受けた人に、うつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症するケースが明らかに多いことが証明されているそうです。ただ、チェルノブイリ事故の場合、情報がオープンにされなかった分、ある意味、不安は限定的であったとも考えられますが、今回の福島原発の事故に関しては、情報があり過ぎることによるストレスが浮き彫りになっているようです。 つまり、「これまでは、情報が多いほど安心につながると言われていたのに、過剰にあり過ぎるため目を背けることも、逃げることもできなくなっている」とのことだ。 確かに、ツイッター等でも、多くの専門家や俄か情報通が、様々な見解を公表したりしていますが、どの情報が正しく、信頼するに足るのかを見定めることは、中々容易ではない。したがって、「より正確な情報を見極めることができないことが、人々の大きなストレスになっている」ことは間違いないでしょう。 そして、このようなストレスが増幅している背景に、今の日本社会の「物事の白黒をすぐにつけたがる傾向」があるとも言われています。確かに、政治の世界でも、あれ程、熱狂的な支持を受けて政権交代を成し遂げたのに、小沢=悪人、鳩山=奇人、菅=無能、とのレッテルが貼りついて、実際、内閣支持率なんて、ジェットコースターの軌道のようです。 昔は、政権に対しても、不満を言いながらでも、もう少し様子を見てみようという姿勢があったと思うのですが、今は、数ヶ月で、こいつは駄目だから辞めさせろ、という声が聞こえてきます。香山さん曰く、「こうした傾向が強まっている日本社会は、どちらに転ぶかわからないけれども、待つしかないという状況に耐えられない。原発事故の問題で言えば、爆発という最悪の事態に陥らない一方で、一気に解決まで進まないという膠着状態が延々と続いている。しかもいつこの膠着状態が動き出すかすらわからない。これでは不安で仕方がないのだ。「目に見えない」「いつ来るかわからない」「いつ終わるかわからない」不気味な状態の行く末を、冷静に見守る耐性のようなものが弱くなっていて、今回の原発事故は、現代の日本社会にとって最も苦手な部分に突き刺さる問題になっており、それが日本人のこころに大きなダメージを与えている」とのことである。 確かに、そうなのだろう。しかし、いつから日本人は、こんなにもせっかちで、すぐに答えを出すことを求めるようになったのだろう。やはり、世の中が便利になって、インターネットで探せばどこかに答えが書いてあるという錯覚や、コミュニティの分化によって多様な価値観を持つ人とのコミュニケーションの機会が減少していることなどが、その原因なのではないだろうか。人間は機械のように思い通りには動かせませんから。思うに、世の中には、実際、分からないことが一杯です。何も全て分かった気になる必要はないのではないでしょうか。白か黒かわからない状態というのは、実際、やきもきしますが、情報に対してオープンな状態なので、より的確に情報の取捨選択が図れるのではないかと感じます。頑なな自分をかたどって、自分を守りたくなる気持ちは理解できますが、それが逆に、不安定さへの耐性不足になるのではないでしょうか。気をつけようっと。 お読み頂き有難うございます。 以下は、ブログランキングです。                                            "励み"にしておりますので、よろしければクリックをお願いします!                                             にほんブログ  

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