深夜ぶろぐ便

深夜ぶろぐ便

中島みゆき

ホームにて

ふるさとへ 向かう最終に
乗れる人は 急ぎなさいと
やさしい やさしい声の 駅長が
街なかに叫ぶ

振り向けば 空色の汽車は
いま ドアが閉まりかけて
灯りともる 窓の中では 帰りびとが笑う

走り出せば 間に合うだろう
かざり荷物を ふり捨てて

街に 街に挨拶を
振り向けば ドアは閉まる

振り向けば 空色の汽車は
いま ドアが閉まりかけて
灯りともる 窓の中では 帰りびとが笑う

ふるさとは 走り続けた ホームの果て
叩き続けた 窓ガラスの果て
そして 手のひらに残るのは
白い煙と乗車券

涙の数 ため息の数
溜まってゆく 空色のキップ

ネオンライトでは 燃やせない
ふるさと行きの乗車券

たそがれには 彷徨う街に
心は 今夜も ホームに たたずんでいる

ネオンライトでは 燃やせない
ふるさと行きの乗車券

ネオンライトでは 燃やせない
ふるさと行きの乗車券



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