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2006.01.15
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カテゴリ:制作日記
恒例となりましたこのらぶふみ紹介も、一応、今回でラストということになります。
最後を飾るのは、最終選考の候補に残ったらぶふみ「思い出のラブレター」です。
今回のこのラブレターには、説明もついておりますので、らぶふみの世界に浸りやすいのでは・・・と、思います。
それでは、どうぞ。



―――ー―――――
(応募者同意の上、イニシャルでおおくりします
なお、この文章の無断転載(一部抜粋・加工を含む)を禁じます)




その手紙は私が大阪へ旅立つという前日に何の前ぶれもなく我が家に届けられました。分厚い封筒なので、狭い郵便受けの中だと少し窮屈そうでした。


(以下、ラブレター本文)

突然お手紙をさしあげます。僕は中学と高校の時、君の一年上だったTです。現在K大学経済学部に通っています。
先日、所用で母校に行った折、廊下に張り出されていた大学合格者の中に君の名前を発見しました、その名を目にした途端、長年思い続けていた感情が押えられなくなり、勇気を出して伝えることにしました。
君のことが気になり始めたのは、僕が中学三年になった頃でした。友達と笑顔で話しながら理科室の前を通り過ぎていく君を初めて見た瞬間、胸がざわめきました。そしてこのざわめきこそが初恋なのだと実感したのです。
当時は高校受験を控え、三年生は全員、放課後補習授業がありましたよね。先生に気付かれないように、教室の二階の窓から下を通る君を見つけるのが毎日楽しみでした。大きな楠の下を通って、夕陽を背に帰って行くセーラー服姿の君を見るだけで、僕は幸せで受験勉強も苦になりませんでした。
一年後、無事志望高校に合格。
そして中学の卒業式当日驚きました。何と在校生総代で送辞を読んでくれるのが君だと気がついた時の喜び!君の読み上げる送る言葉は、一言一句僕の為に読んでくれているように思い感動しました。
それから又一年。君は必ず僕と同じ高校を受験するはずだと確信し、合格発表の日、気になって見に行きました。その中に君の名を発見。あー、これで又二年間、君の姿を見つける楽しみができたと喜んだものです。
その二年の間、遠くから見るだけで声をかける勇気もないまま卒業してしまい、大学生になりました。
大阪の短大へ行くんですね。
もしかして一年後、同じ大学に入学してきてくれたらな、と淡い期待も持っていたので残念です。もう学校内で君を探す楽しみは望めなくなりました。しかし、勇気のなかった僕が、こうして思いを手紙で伝えることができるようになっただけ成長したように思います。
どうか大阪へ行ってもお元気で、有意義な学生生活を送って下さい。

                 昭和○○年三月末


もう四十年近くも前にもらったラブレターですし、いつの間にか失ってしまったので全文を記憶しているわけではありません。きれいな文字が印象的でした。直接告白されないまま長い間思い続けてくれた人がいたんだと、感慨深くもあり嬉しくもありで胸が熱くなりました。
現在だと、もしかして、ストーカーだとかきしょいとかいう言葉で片付けられてしまうかもしれません。その当時は、これが青春なんだ、と思えるまだのんびりとした時代でした。
ここでTさんの名誉のために申し上げておきますが、実際の手紙の内容はもっと表現が豊かで美しく、文章力があったのです。私のペンで書くことによりレベルダウンして申し訳なく思っています。
その後、Tさんとは三ヶ月余り大阪、四国間で手紙のやりとりをしました。
短大一年の前期を終え、夏休みに帰省する途中、Tさんの大学のある高松で初めて会うことになりました。中学二年間と高校二年間同じ学校に通っていたとはいうものの、一年先輩の上お互い団塊の世代、とても人数が多かったので顔を見てもはっきりとは思い出せませんでした。
二人で緑の美しいK公園を歩きながら、各々の話をしました。Tさんは文章から想像していた通り誠実な感じの人でした。ただ、しばらくしてから将来の夢を語り始めた時、早くも
(あー、この人とは付き合っていけないわ)
と思ってしまいました。

「僕は大学を卒業したらブラジルに移民したいんだ。コーヒー園にも興味があるし、むこうには大きな夢を持たせてくれる何かを感じるんだよ」

ごく平凡な、普通の十八歳の女の子だった私は、
(ブラジル?移民?エッ、とんでもない。日本が大好き、家族が大好き。この人の夢について行く自分にはとてもなれない!)
手を振って予讃線の急行列車に乗った私の表情は、一時間前より少しこわ張った作り笑顔になっていたかもしれません。
その後、Tさんから届く手紙に返事を書くことができなくなりました。心の中で(移民)という言葉が重くのしかかり、私の気持ちをなえさせたのです。やがて、むこうからも届かなくなりました。

あれから随分長い年月がたちました。
私は優しい夫に恵まれ幸せな日々を過ごしています。
夫には悪いのですが、時折あの時のラブレターを思い出すことがあります。最近では、K公園で熱く語ったTさんの夢を、どうしてもっと真剣に聞いてあげられなかったのかとちょっぴり後悔しています。
「いっしょにブラジルに行こう」
と私を誘ったわけでもないのに、勝手に自分にあてはめて想像してジ・エンドにしてしまった未熟さ。
何年かに一度の割合で届けられる高校の卒業名簿のTさんの住所はいつも空欄です。もしかして夢をかなえてブラジルに渡り、成功してむこうの生活を楽しんでいるかもしれません。空欄がそれを物語っているようにも思えるのです。




―――――――
如何でしたでしょうか。
以上で一応、らぶふみ紹介も終了、となります。
らぶふみ賞に選ばれたらぶふみ、最終選考の候補に残ったらぶふみと、それぞれにそれぞれの素敵な恋の話が詰まっていたのではないかと思います。
今は、自分の思いをラブレターにしたためて相手に渡す、というのは少なくなってしまったように思いますが、やはり手紙という形式にはそれの良さがあるのだなあ、と私は思うことができました。
ご応募してくださった方々、本当に有難う御座いました。
そして、此処を読んでくださっている方々、これからもどうぞよろしくお願い致します。



タイムマシーン : さらに焦燥

まだ脚本ができません。脚本家F(生徒)も前年の夏に自分たちで作ったものほどの熱意がないのでとても不安だったのを覚えています







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最終更新日  2008.12.24 10:08:33
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