スタンダードについて

CFAでのシャム猫
私はCFA(Cat Fanciers’ Association, Inc.)というアメリカに本部のある純血猫血統管理団体に所属し、そのスタンダード(基準書:この猫種はこういうスタイルの猫であるべきと細かく書かれています)にそって猫をブリーディングしていこうと思っているブリーダーです。
純血猫血統管理団体はその他にTICA(アメリカ)、FiFe(ヨーロッパ)などがあります。

CFAのシャム猫に対するポリシーはいたって厳格で厳密なものです。
なぜなら、CFAが公認している猫種のうち、自然発生した猫種のまま、他の猫種の血をまったく入れずに公認されている猫種はシャムとアビシニアンの2種類だけです。
他の猫種はすべて何らかの別の猫種の血を導入して、現在公認されている猫種に固定した品種です。
つまり、CFAにとって、シャムとアビシニアンのピュアブラッド(純血)は犯さざるべき神聖な猫種の双璧であるわけです。
ですから、絶対にこの2品種に関しては他の猫種の血が入る事を許さないのです。

シャムから突然変異でオリエンタルなどのフルカラーキャットや、長毛のバリニーズが発生したとなっている文献が多いですが、実際に突然変異でそういう猫が出るのなら、これだけ長い間、シャムのブリーディングが色々なブリーダーの手でされているのですから、その後もたまには突然変異体が生まれてもおかしくないですよね?
しかし、実際にそういうことはまず起こらないわけです。
従ってCFAはそれらの突然変異によって発生したとされている猫は実は長毛の因子のある何らかの猫やフルカラーの因子のある何らかの猫を交配させて生まれたと考えているようです。
ですから、そういう他の猫種の血が入っているであろう
オリエンタルやバリニーズをシャムと交配したら、絶対に生まれた子猫がシャムと同じ容姿であっても、シャムとしては認めないわけです。
ただ、オリエンタルやバリニーズがシャムから作られた猫種であることは認めているので、異種交配も認めていますが、その間に生まれた子猫はどんな容姿でも異種側のオリエンタルやバリニーズとしてしか登録できないわけです。

なお、他の団体に血統登録してあるシャム猫でも、CFAにシャム猫として登録するためには、8代祖の血統書が必要です。その猫のご先祖8代がすべてシャム猫だけですと証明できなければ登録することはできません。
これが他の猫種ですと一般的には5代祖の血統書で、比較的最近公認された猫種ですと3代祖の血統書で登録が可能なんですね。
一応ルール上では8代祖の血統書があれば認めますとなっていますが、通常は自分の猫の8代祖の血統書なんて集められません。
ですから実際には他の血統登録団体からCFAへの移籍はシャムにおいては実質的には認めてないのと同じですね。
反対にCFAに登録してあるシャムはTICAやFiFeにわりと簡単に登録できます。
スタンダードとは
純血種の猫にはすべてスタンダードというものがあります。
これはその猫種がどういう外見をしているべき猫であると決めているものです。

使役目的別に選択交配されてきた犬と違い、猫のスタンダードとはどういう外見なら、人間にとって美しく可愛く見えるか、ということに重点を置かれて決められています。
従って、スタンダードに近い猫ほど、誰が見ても美しく可愛く見える外見をしていて、人間が思わず愛苦しいと思える猫なわけです。

血統がすごく良いということは高級であるということではなく、スタンダードに近い猫が先祖代々続いているということです。
つまり血統が良い猫ほど、人間にとって美しく、あるいは可愛く思える外見の猫であるということなんです。

よく、「アメショーなら何でもいいんです、ペットで飼うんですから血統にはこだわりません。」とおっしゃる方がいるのですが、血統にこだわらなければ、その方がアメショーがイイとその猫種を選んだ根拠となるアメショーらしさが外見にない猫ちゃんを入手する可能性が高いわけです。
血統にこだわらないということは、私は純血種であればその猫種の中のおへちゃで不細工な子でいいんですと言っているのと同じことなんですよ。
そこのところをご理解いただきたいと思います。

猫の命に貴賎はありません。MIXの猫ちゃんだってペットタイプの猫ちゃんだって同じ重さの命を持っています。
猫に高級も何もあるわけないじゃないですか。
ただ、誰もがこの子なら子孫を残しても良いと思える猫とそうじゃない猫がいるだけです。
Siamese Breed Council
CFAにはそれぞれのブリード(猫種)毎にブリードカウンシルという組織があり、一定の条件を満たしたブリーダーが自由に入会することができます。

私が入っているのは当然、シャム猫のブリードカウンシルです。
ブリードカウンシルにはセクレタリー(議長)がいて、毎年ボードミーティングが開催されます。

ミーティングで話し合われる議案はカウンシルメンバーから提出される案件や、その猫種の育種や保護、健康問題などに取り組んでいる団体への協力や寄付をどうするかなどです。
メンバーから提出される案件の多くは、シャム猫のスタンダードが改定されるべきかどうかについてです。

メンバーなら誰でもミーティングに参加してそれらの案件について発言する権利があります。
また、ミーティングに参加できないメンバーのために、ミーティングの案件は事前に文章で送られてきて、その案件について可決するか否決するか自分の意見を書類で投票することができます。
そして議案はそれらの投票の多数決によって採決されます。
つまり、誰かが「今のスタンダードではシャム猫は逆三角形の顔となっていますが、これは来年から丸顔にしたらどうでしょう?」と議案を出し、他のメンバー達がその案を可決するか否決するか投票することによって、次の年からのスタンダードが従来通り変更無しになったり、新案可決によって変更になったりするんです。
スタンダードとは普遍のものでも誰かが決めて、一方的にブリーダーに押し付けられるものでもなく、ブリーダー達の意見によって定められた理想の猫のスタイルを文章化したものなんですね。
ブリーダーはブリードカウンシルに入ることによって、その猫種のスタンダードに自分の意見を反映させることができるんです。


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