[Stockholm syndrome]...be no-w-here

2023/05/04(木)18:54

ものぐさ映画評(part60)

映画(163)

【アスファルト】… 満足度★★★★ 薄曇りの空、さびれた集合住宅、どこか寂しげな眼差しの人達。 偶然に出会った彼らが不器用ながらも交流する中で、互いに心の隙間を埋める特別な存在へと変わって行く…。 フランス郊外の団地に暮らす、年齢も境遇もバラバラな男女が織り成す群像劇。 特に何か素敵な事が起こる訳ではない。 感情を剥き出しにして想いを伝える事もない。 しかし、だからこそ、そっと寄り添いたくなる愛おしさがこの作品にはある。 最近観たフランス映画【誰かの幸せ】も良かったが、そこにジム・ジャームッシュ監督を思わせるシュールさとオフビート感を加えた本作は、更にその上を行く秀作。 時折聞こえる不気味な音は、彼らの心に吹き込むすきま風を象徴しているように感じた。 【ベトナムを懐(おも)う】… 満足度★★★ 妻の死をきっかけに、故郷ベトナムを離れ息子が暮らすニューヨークへ移り住んだ老人トゥー。 しかし、英語も喋れず、アメリカ育ちの孫娘タムとは価値観の違いから打ち解けられない彼は、老人ホームへ入れられてしまっていた。 そんなある日、トゥーが施設を抜け出してアパートへ戻って来た事から…。 序盤は、祖父と孫娘の世代間ギャップを描いたコメディかと思ったが、終盤になると「ベトナム人の歴史とアイデンティティを次世代に伝えたい」という監督の想いが見えて来た。 ただ、(意図的なのかも知れないが…)その肝心の部分が説明不足で、特にトゥーと息子グエンの関係性が全く描かれていないため、ベトナム戦争やボートピープルに詳しくない僕には幾つか腑に落ちない点が残った。 それでも、美しいベトナムの田園風景とトゥーの半生、3世代それぞれの想いはしっかりと描かれているので、疑問点はあれど感情移入はし易いと思う。 ラストに流れる主題歌も秀逸。 歴史や文化の伝承という問題は日本人も他人事ではないだけに、色々と考えさせられる作品だ。 蛇足ながら、【草原に黄色い花を見つける】に主演していた子役2人が、本作でも共演していた。 ベトナムでは有名な子役らしい。 また、老害扱いされる高齢者の知られざる過去を描いた作品として【幸せなひとりぼっち】を思い出した。

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