1987年6月6日のヒーロー達…
作品解説をちゃんと読んでいなかったため、てっきり第2次世界大戦中の物語と勘違いしていたが、月組公演【フリューゲル -君がくれた翼-】は東西冷戦下のドイツが舞台だった。1988年なので、ベルリンの壁が崩壊する前年だ。「ベルリンの壁」「音楽コンサート」と聞いて思い出すのが、1987年6月6日にデヴィッド・ボウイが西ベルリンの国会議事堂前で行った野外ライヴだろう。演出を担当する齋藤吉正も、ここから着想を得たのではないか。今では伝説となっているこのライヴは、ベルリンの壁に隣接した会場だったため、ボウイは設置した巨大スピーカーの4分の1を壁側(東ベルリン側)に向けて歌ったという。そして、代表曲『Heroes』の時、彼は観衆に向けてドイツ語でこう語りかけた。「この壁の向こうにいる友人達のために幸せを祈ろう」ボウイの声は、西ベルリンの観衆8万人だけでなく、壁の向こうに集まった約5000人の東ベルリンの聴衆にも届いていた。当時、許可なく集会を開いただけで逮捕される東ベルリンの情勢にあって、ボウイのこの行動は抑圧されていた東ドイツ国民の心を奮い立たせる。僕もライヴ当日の映像を観た事があるが、警察と揉み合いながら「俺達をここから出してくれ!」と叫ぶ人々の姿が忘れられない。そして、2年半後の1989年11月9日、自由を求める彼らの声は遂にベルリンの壁を崩壊させた。ボウイが亡くなった2016年1月10日、ドイツ外務省はTwitter上で「さよなら、デヴィッド・ボウイ。あなたは『ヒーローズ』の一員です。壁を壊すために力を貸してくれてありがとう」と弔辞を送った。このメッセージからも、彼のライヴがどれ程の影響力を持っていたかが窺えるだろう。正に、音楽の力が時代を動かした瞬間だった。その同じ6月6日に、星組公演【1789 -バスティーユの恋人たち-】を観劇するのは何とも運命的な巡り合わせを感じる。あの日のデヴィッド・ボウイのように、組子達の熱演と歌声はきっと僕の心を奮い立たせてくれるに違いない。 『Heroes』は、ベルリンを東西に分断する壁の下、銃を持った警備兵が監視する中でデートをする恋人達について歌っている。「イルカみたいに泳げたら良いのに」という一節は、その当時、シュプレー川を渡って西側に逃げようとする人々が溺死した事があったからだという。こちらは、1985年に行われた『LIVE AID』でのパフォーマンス。(歌詞は少し違うが、アルバムに収録されたものを載せておく)DAVID BOWIE『Heroes』1977年I, I will be king僕は王様になるAnd you, you will be queenそしたら 君は女王様だねThough nothing will drive them away奴らは 我が物顔でのさばってるけどWe can beat them, just for one day僕達はきっと打ち勝てる たった1日あればWe can be Heroes, just for one day僕達はヒーローになれるんだ 1日あればAnd you, you can be mean君は 堕落した女にもなれるAnd I, I'll drink all the timeそしたら僕は 1日中飲んだくれるよ'Cause we're lovers, and that is a factだって僕達は 正真正銘の恋人同士 Yes, we're lovers, and that is thatそう 僕達は愛し合ってるんだ だからさThough nothing will keep us together2人の未来には 何の保証も無いけどWe could steal time, just for one day全てを帳消しにできる たった1日あればWe can be Heroes, forever and ever僕達はヒーローになれるんだ そして伝説になるWhat d'you say?君はどう思う?I, I wish you could swim君が泳げたら良かったのにLike the dolphins, like dolphins can swimイルカのようにね イルカは泳げるからThough nothing, nothing will keep us together2人の未来には 何の保証も無いけどWe can beat them, forever and ever僕達は奴らに打ち勝てる そして伝説になるOh, we can be Heroes, just for one day僕達はヒーローになれるんだ 1日あればI, I will be king僕は王様になるAnd you, you will be queenそしたら 君は女王様だねThough nothing will drive them away奴らは 我が物顔でのさばってるけどWe can be Heroes, just for one day僕達はヒーローになれる たった1日あればWe can be us, just for one dayありのままの2人になれるんだ 1日あればI, I can remember (I remember)はっきり覚えてるよStanding, by the wall (by the wall)僕達は壁の傍らに立っていてAnd the guns shot above our heads (over our heads)頭上では 幾つもの銃声が鳴り響いていたAnd we kissed, as though nothing could fall (nothing could fall)僕達はキスを交わしたね まるで何事も無いかのようにAnd the shame was on the other side恥ずべき行為をしたのは 奴らの方なんだOh, we can beat them, forever and ever僕達は奴らに打ち勝てる そして伝説になるThen we could be Heroes, just for one day僕達はヒーローになれるんだ たった1日あればWe can be Heroes僕達はヒーローになれるJust for one dayたった一日あればWe can be HeroesヒーローになれるんだWe're nothing, and nothing will help us僕達はちっぽけで 世界から見捨てられた2人Maybe we're lying, then you better not stay僕達は本音じゃ話せないから 君はここを離れた方が良いBut we could be safer, just for one dayそうすれば もう怯えなくて済むんだ 1日あれば just for one dayたった1日あれば