FFいれぶんのへたれな小説とか

2005/03/01(火)13:11

3.サンドリアティー 1

薄れゆく風の香りと(14)

 噴き上げられた水しぶきが、陽光を反射して光り、水面に幾重もの紋様を描く。  獅子の広場。ベンチに寝そべりながら、ナギサは手の平越しに青い空を眺めていた。  両手に残る、リアルな感触。短剣はDSを貫き、その存在を無へと返した。本来あるべき姿へと。  頭をよぎる、自問自答。何度も繰り返した。あれでよかったのだと。  死者は土へと還る。報われなかった想いも、歩んできた道も、全てを抱えて。歪んだ存在は悲しいだけだ。だから、自分の行動は間違っていない。  だが、頭では分かっていても、体のどこかで納得できない自分がいた。 (何故、あの時短剣を止めようと思ったのか……)  気に食わない。衝動的にそう思った自分も、死んでまで誰かのために苦しんでいた死者も、生きているのにただ死を待つだけの老婦も。  それは矛盾だ。だが、感情は矛盾がなければ存在しない。  生きているのに過去を忘れようとした老婦。死んでいるのに過去に縛られた亡者。そして、そのどちらにも苛立ちを感じている自分。 「ああ、もうっ!」  大きくかぶりを振り、立ち上がる。こんな所でうじうじしていても始まらない。そもそも、そんな連鎖から抜け出すために受けたクエストではなかったか。  ユウイチは、仕事があるからとジュノへ戻っていった。こちらもさっさと依頼を済ませて追いかければ、手助けくらいできるかもしれない。  そう決めると、ナギサは歩き出した。驚く老婦の顔が、少し楽しみだ。

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