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2007/03/11(日)21:33

ふたたび 東欧のこと など

欧州(25)

南塚 信吾(編) 『東欧革命と民衆』 (朝日選書[1992年])「比較的平均的な生活をしている層」を描くという、従って、杉山隆男氏の『きのうの祖国 東欧崩壊』と同様の手法で作られた本。各章は、八人の方々による分担執筆。チェコの章。平易な言葉で書かれた明晰な文章だ、と思ったら、林忠行氏。『粛清の嵐と「プラハの春」』を書いた方だ。ハンガリーの章。市場。厳しい生活のことが書かれてはいるが、決して悲惨な状況を描いたものではない。しかし、私は、こうしたルポルタージュを読みながらも、雪の降りしきるドレスデンの市場でのマーシャの母の姿を、頭の中から消し去ることが出来ない。そして、これほどまでも『廻廊にて』に魅せられている自分自身を、今でも理解出来ずにいる。小林 和男 『モスクワ特派員物語 エルミタージュの緞帳』(NHKブックス[原著刊1997年])元NHKモスクワ支局長であった著者によるエッセイ集。20代後半、徹夜明け勤務の早朝に、ソ連軍のプラハ侵攻に関する至急電を受け取った、と書かれている。チェコを、著者は“まだ見ぬ恋人”として想っていたように感ずる(私の誤解/曲解かも知れぬが)。著者のお仕事柄、政治に関する内容のエッセイが多いが、シャガール展のことや、指揮者ゲルギエフとの出会い、諏訪内晶子さんが優勝したチャイコフスキー・コンクールのこと、ロストロポーヴィチに番組出演を依頼した際のことなど、絵や音楽も好きな私には、たいへん興味深い逸話ばかり。マルク・シャガールの名前は、ルチア・ポップのファンには格別な想いを持たせてくれる。ポップのメトロポリタン・オペラへのデビュー、1967年の『魔笛』の舞台と衣装をデザインしたのが、ほかならぬシャガールだったからである。平田 達治 『中欧・墓標をめぐる旅』 (集英社新書[2002年])ドイツ・オーストリア文学、中欧都市文化論を御専門とする方による一冊。30年に亘る訪問先の集大成。圧倒された。

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