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2005/03/11(金)00:01

堀越 孝一 『いま、中世の秋』

欧州(25)

堀越孝一『いま、中世の秋』を、今日,読み了えた。 中公文庫の一冊であり、今回が三回目となる。 ライコスダイアリの頃に書き始めた、この日記にも何度か記しているが、僕はヨーロッパ中世史に、高校生の頃から興味を持っている(だから、いまでも、『西欧精神の探求』などを読み返すのである)。その動機付けのひとつが、高校生のときに読んだ、ホイジンガ『中世の秋』であった[ただし、このときの本は角川文庫版であり、堀越さんの訳によるものではなかった]。 理系のクラスに属していながら、文学と音楽とジャーナリズムとテニスに熱中する高校生であって、なにをどう間違ったのか(あるいは間違わなかったのか)、結局、いわゆるエンジニアになってしまった自分であるが、幸いにも、世の中に各種の新素材などを送り出すことができた(これは、もちろん優秀なる部下たちに恵まれたおかげである)。 こうした自分のことを、堀越さんが本書の「歴史家の仕事」という節で触れていらっしゃる“経歴の始まり”という箇所に重ね合わせるのも不遜に過ぎるが、きっかけというものの不思議さを感ずる(以上の記述では、論理的に不十分であるということは承知しているが、僕がエンジニアになったことについての、諸々のことがらは書かない)。 『いま、中世の秋』を初めて読んだのは、大学院生のときだった。なんと衒学的な文章だろう、と思ったことを、今も思い出す。そして、あれから十五年以上を経て読み返してみると、堀越さんの文章は、けっして衒学ではなく、真情の吐露であり、高等なる言葉のあそびであり、照れ隠しですらあったのだな、と思う。

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