2005/08/15(月)16:18
怒涛の同窓会 【その3】 -1通の葉書 差出人不明-
同窓会のみんなにほどほどに酒が入り、
わいわい騒がしくなってきたときに、
私は、思い切ってある決断をした。
「今日こそは、ちゃんと謝らなきゃ」
これを理解してもらうためには、少々説明が必要である。
私は高校3年生のとき、結構勉強に燃えていた。
夏休みが終わってからの話なので、周りのみんなよりスタートは遅かったが、
人間本気になれば、どうにでもなると信じていたので、
そんなにあせることもなかった。
しかし、受験勉強というのは一人でこつこつとやっていては埒があかない。
やはり、いいライバルというものを持ってはじめて、
切磋琢磨していけるんじゃないかな、と考え、
身近の自分より成績がいい女の子をライバルとして目標にすえた。
そしてテストがあるごとに、
「何点やった?」
と、しつこく聞き、自分との差を確かめながら勉強していた。
素質の差なのか、いつまでたってもその差は埋まらない。
少しあせり始めた自分がそこにいた。
時だけが無常にも過ぎ去っていった。
そして、センター試験がやってきた。
私の目指していた大学は、センター試験:2次試験の得点比率が、
800:1200で、センターが多少悪くても、
2次試験で挽回できるような仕組みになっていた。
しかし、やはりセンター試験でいい点を取っておいて、
余裕を持って大学を受けたいとも思っていた。
私の年のセンター試験は、ちょうどカリキュラムが変わった年(1997年)で、
センター試験も、その出題範囲に戸惑っているように見えるぐらい、
簡単だった。
通常では、8割(640点)とればボーダーラインというところを、
8割5分(680点)でも、ボーダーすれすれというレベルだった。
結果は、
私 684点:ライバルの女の子 721点
私の完敗であった。
生まれて初めて本気でやった勝負に負けたみたいで、
結構悔しかった。
しかし、私もその女の子も同じ大学、同じ学部を受けるということで、
「勝負はまだまだ続くぞ」なんて自分を励ましつつ、
2次試験に向けての勉強に力を注いだ。
実を言えば、私は2次試験のほうこそ自信があった。
私のもっとも得意にしていた科目である『世界史』の配点が400点だったし、
英語、国語もまあまあ解けるような気がしていた。
「多少のハンデなんて、何てことないやろ」
ひそかにそんな風に思っていた。
そして、2次試験当日。
国語の漢文で、解いたことのある文章が出るという幸運もあり、
「合格できそうだな」と、意味もなく自信満々だった。
ライバル視していた女の子も、
「結構できた気がする」
と、頼もしい口ぶりで感想を言っていた。
数日後、運命の結果が出た。
私 ○:ライバルの女の子 ×
私は合格発表を見に行ったのが遅かったので、
彼女とは会えなかったけれど、
後日、だめだったという話を人づてに聞いた。
散々ライバル視をしておいて、
「今度こそ負かしてやる」
「勝負だ!」
なんて一方的に宣言をしておきながら、
私だけが合格するなんて、思いもよらなかった。
私が合格できないことはあっても、
彼女が合格しないなんてコトはありえないと思っていたので、
ショックだった。
そして同時に、
「済まないことをしたな。僕のせいなのかもな」
なんて、彼女に対する贖罪の気持ちでいっぱいになった。
しかし、彼女は卒業式には来なかった。
謝る機会を逸した私は、どうしようもなく途方にくれた。
そんな私のところに、卒業式の数日後1通の葉書が届いた。
あなたの勝ちです おめでとう
というメッセージ付きの葉書が。
差出人の名前はなく、さらに筆ペンで書いてある、
変わった葉書だった。
一瞬何のことなのか分からなかったが、
「まさか・・・・あの子か」
「絶対にそうだ。そうに違いない」
いやな思いが頭を駆け巡り、ものすごい後悔の念が私を襲った。
「早く、謝らなきゃ」
受話器に手をかけようとしたが、
「なんか傷口を広げるようで、申し訳ないなぁ」
と、弱気な私がささやき、
結局謝ることができずに年月は流れていった。
5年ぐらい前にも同窓会はあったのだが、
そのときはその子は出席しておらず、
私の心の奥にはずっと、あのときのしこりが残り続けていた。
そして、今回の同窓会。
10年ぶりにその子と再会した。
そして、謝ることができた。
まあ、当の本人は案外けろっとしていたが、
私は長いこと心にしまっていた、すでにトラウマになりつつあった、
いやな思い出が、浄化されていくようで、
とてもすがすがしい気持ちになった。
10年間私の心の重荷になっていた(大げさか?)、
しこりが拭い去られて、本当によかった。
どうまとめればいいのか分からなくなってきたが、
皆さんは、謝るときはすぐに済ませてしまいましょう。
私みたいに、長いこと放っておくと、
心にこびりついてなかなか取れなくなっちゃいますよ。
というのが、今回の同窓会でした。
次回の同窓会は、5年後ぐらいということで、
みんながどのように変わっているかが楽しみです。