「林住期」五木寛之
懸賞で当たって、文庫本の「林住期」が届いたのが1週間ほど前。一日で読めてしまう内容です。人生を25年ごとに区切って「学生期」「家住期」「林住期」「遊行期(ゆぎょうき)」と捉え、特に50歳以降の、リタイヤに差し掛かる年代の生き方や価値観を根本的にくつがえそうと五木さんの「熱弁」が納まっていました。この筋の本は、価値観の押し付けになると全く読む気を失うのですが、「林住期」=「黄金期」との考え方には共感を覚え、様々な人生の見方の勉強になりました。一番、心に残ったのは五木寛之さんの幼少期の体験。教員だった父親のこと、韓国の寒村での暮らし、ソウル(京城)からピョンヤン(平城)に移りそこで敗戦を迎え、ソ連軍が進駐してくる。病床に伏せた母がやがて亡くなり、父親までが放心状態になる中親兄弟のために働かざるをえなくなった五木少年の心象風景。想像を絶する「生命」の極限状態を体験した人だからこそ、人生の深さを語れると実感させられました。