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テーマ:ニュース(77731)
カテゴリ:社会
つい先日、夕方からのテレビを何となく見ていたら、その内容から目が離せなくなった。日本は今でも世界に冠たる技術大国だが、その凄さは大きなメーカーのお金をかけた技術だけが優れているのではなく、従業員数人の下町の工場でも世界一の技術を持っていたりすることだろう。民族として技術に秀でた才能があるのだと思う。
テレビに出ていたその技術は、千葉の資本金2000万円という小さな会社が生みだした、まさに夢の新技術だった。その会社、株式会社アビーという聞いたこともない小さな会社の社長が生みだした冷凍技術は恐らくこれから世界標準となっていくであろう。 食物は冷凍すれば必ず味は落ちる。どんなに冷凍技術が発達して、風味の落ちない瞬間冷凍などと言っても、食べてみれば生より遙かに味が落ちるのが誰の舌にもあきらかだ。だが、半年前に冷凍した鱈が刺身で食べて生と変わらない美味しさだとしたらどうだろうか? 実はこの小さな会社がそれを現実のものとしてしまったのである。 その技術はCAS・電磁冷凍という。冷凍によって味が落ちるのは、凍らせる際に外部と内部でどうしても温度差が生じる為に、必ず細胞壁が破壊されてしまい、解凍した時にドリップと言われる汁が流れ出て旨み成分が流出して、同時に食感も落ちるからだ。それを、なんと食品を温める電子レンジの技術を逆応用して、素材を磁場環境の中において微弱エネルギーを付加し、素材の水分子を振動させながら、水分の氷結晶化を抑え、過冷却状態を維持しながら一気に凍らせてしまうことにより、素材の鮮度・味・風味などがそのまま残されることになる。 理論的な夢の技術だけならいくらもあるが、この技術は既に製品化されて世界にも注目されており、既にCASによる冷凍食品も店頭に列び始めている。今まで冷凍物は一切使わないのが当たり前だった高級料亭でも、旬の良質な食材をまとめ買いして自前のCAS冷凍庫に保存することにより、いつでもほんとに美味しいものをお客様に提供出来るようになったと喜んでいる。 個々の社長さんが目指したのは元々、日本の農業や漁業の救済である。食材は採れる時はたくさん採れても、もちろん全然採れない時もある。そしてあまっている時には大量の食品がムダに捨てられてしまっている。この大きな矛盾をこのCAS冷凍技術は解決することが出来るのだ。魚だって大漁の時に捕って、半年~一年全く変わらない鮮度で保存しておけるならば、貴重な食料をムダにしなくて済むし、不漁のときにも困らない。 実際、島根県隠岐郡海士町では離島故に本当に美味しい魚が捕れるのに、離島であるが為にそれを新鮮なまま大消費地に届けることが出来ず、貧しさに喘いでいた。それを町長の英断でCAS冷凍システムを導入することになったが、漁民は「冷凍なんて・・・」と反対意見が多かったのである。しかし、この社長は地元で試食会を開き、それにも出席して貰えなかった漁師さん達の為にさらに港にまで行って、半年前にCAS冷凍したイカを解凍して刺身で食べて貰った。 いっぺんで漁師さん達の態度が変わった。「これはうまい」と。魚の味を知り尽くした漁師が半年前の冷凍イカ刺しを美味いと言ったのである。これは本物だ。事実、ここで捕れたサザエがCAS冷凍されて都会のスーパーで試食された時、食べた誰もが捕れたての生だと思ったのである。解凍しても磯の香りがするサザエ。何と素晴らしい技術だろう。今この会社では、今年からインターネットを通じてCAS冷凍食品を通信販売する計画もあるようだ。(株)アビーのサイトはここになる。 http://www.abi-net.co.jp/ 特に感心したのはこの社長のひたむきな食を守ろうとする想いである。儲ける為ではない。彼は本当に今瀕死の状態にある日本の農業や漁業を何とかしたかったのだ。今、日本が抱えている潜在的な食糧危機に際してもこのCAS技術は大きく役立つだろう。その上交通の不便なところでも本当に新鮮で美味しい農産物や海産物を味わえるようになるのである。何より今毎日捨てられている大量の食料を少しでもムダにしないように出来るなら、これほど素晴らしいことはない。そしてこの技術は食品だけに留まらず、医療の分野でも注目されている。細胞壁を破壊することなく冷凍出来ることにより、臓器や血液の保存にも非常に適しているのだ。 この技術が早く広まって欲しい。そしてそれによって日本の農業・漁業が本当に蘇って欲しい。多くの人はそれが今どれほどの危機であるか全くわかっていないのだから。
Last updated
2005/06/02 09:05:39 PM
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