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カテゴリ:友情
あの日から今日で7年が経つ。
学生時代、最も仲の良かった友人が行方不明になってから。 3年前の2月16日、我が家の電話が鳴った。彼の奥さんからだった。 「あの・・・うちの人、どこにいるか知りませんか?」 あの切羽詰った声は今でも鮮明だ。 聞けば5日前に家を出たきり、帰っていないと言う。 しばらく連絡を取っていなかったこと、彼の居場所は分からないこと、自分も探してみることの3点を伝え、電話を切った。 その日から「奴」を探す日々が始まった。勤め先(既に辞めていた)、共通の友人、昔行きつけだった店、「奴」の親族・・・・ 誰も「奴」の居場所を知らなず、知りたくなかった事実だけが明らかになった。 新たな勤務先の最終面接まで行ったのに、その面接会場に現れなかったこと、辞めた勤務先に「大人の関係」になった女性が居たこと、その女性も一緒に会社を辞めていたこと・・・ 元々、遊び人で、学生時代は夜の仕事をやっていたから、畳の上では死ねないタイプだとは思っていた。だから「奴」が結婚すると聞いたときは驚いた。しかし私は喜んで式に出席し、神の前の証人として書類にサインまでした。 なのに彼は突然、消えるように居なくなってしまった。 警察に捜索願は当然、出したらしいが、事件に巻き込まれた可能性が極めて低い人間に対してローラー作戦を展開してくれるほど警視庁も暇ではない。 東京にいるとは限らないのだ。 しかし、彼の行動パターンからすると、絶対、東京のどこかにいる。 そして、その勘はあたった。 数年前、行きつけだった店のマスターから電話があった。 「今、「奴」が来てるんだけどさあ。」 私はマスターに彼を引き止めておくようお願いし、店に直行した。しかし当時埼玉県在住だった上に、埼京線、本数少なすぎ! 1時間後、店に飛び込んだ時には、既に「奴」の姿は無かった。 「首に縄つけて、帰るって言っている客を引き止めるわけにいかないでしょ。それに、今から奥さんのところに帰るって言っていたし。」とマスター。 マスターに非は無い。が、「奴」の言ったことは絶対ウソだ。奥さんはそのとき既に実家に引き上げていたし、奥さんの実家は長野だ。 マスターは「悪かったね」と、バーボンを一杯おごってくれた。 「酒は明るく、楽しく」が信条の私にとって、あんなに楽しくない酒は後にも先にも無い。 案の定、「奴」の行方は再び途絶えた。 そして今日、「奴」の法律上の「死亡」が成立する。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.02.11 00:09:43
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