2006/02/01(水)19:57
アロマと本『夢先案内猫』
アロマと自然療法の学際的専門誌『aromatopia』にて連載中のフォトエッセイ「aroma romantique -香りの文芸散策-」にて取り上げております本の紹介コーナーをホームページに作りました。コーナー名は「BOOKS」です。下記URLよりご覧くださいませ。
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写真は『夢先案内猫』の表紙です。連載第一回(『aromatopia69号』)で取り上げました。第一回では、幻想性の高い絵を描く画家たちの感性による香りの表現について述べています。ここでは掲載文の一部抜粋をお届けします。もし御興味をお持ちいただけましたら、ぜひ『夢先案内猫』をご一読くださいませ。
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独学で己の美の世界を構築した画家にして舞台芸術家のレオノール・フィニ。彼女は1908年に南米ブエノス・アイレスで生まれ十七歳でパリへ出ました。フィニは、猫という小さな野性を愛し、幻惑の色彩で絵筆をとった画家です。フィニの絵に登場する少女の顔のスフィンクスは、女性の魔性を具象化したキメラのようでもあり、画布の中からこちらに向って謎をかけ、見るものを惑わせ魅了します。また、瞑目する人物たちは、解答のない謎解きの答えを探して、永遠に醒めることのない夢に彷徨っているようにも見えます。
『夢先案内猫』は、そのような幻想質の絵を描くフィニが、絵筆ではなく言葉でもって自らのイメージを綴った作品です。その作中では、フィニが身近にしていた小さな野性のにおいが、主人公を蠱惑の世界へ導いていきます。
中略
絵画には、描き手のフィルターを通した情景が、時間、空間ごと封じ込められています。描き手が絵筆を置いた瞬間から、その絵の中の時間が動きだし空間は息づき始めるのです。そこには、もちろん、時空の表現形態の一つであるところの香りも存在すると想定することができます。
幻想性の高い絵を描く画家は感覚が独特であるがゆえに、五感に訴えるものの捉え方にも独自性があると考えられます。そんな画家の書いた本をひもとき、改めて絵と対峙して、描き出された幻想世界の香りを嗅ぎとってみることは、香りと触れ合う新たな試みといえるのではないでしょうか。
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