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第6章 睡眠時無呼吸症候群

-イビキの大きな人は要注意
睡眠時無呼吸症候群は、7時間を超える睡眠中に10秒以上の呼吸停止が30回以上起こり、この無呼吸が「レム睡眠」(浅い眠り)、「ノンレム睡眠」(深い眠り)の両方にみられる病態です(7時間以下の睡眠では1時間あたり10秒以上の呼吸停止が5回以上)。ちなみに夢はレム睡眠でみます。

肥満者は、体細胞の増加とともに上気道(主に咽頭部)が狭くなりやすく、健康な人でもある程度認められる睡眠中の上気道の狭小化がさらに助長されます。また睡眠中は舌根部が沈下しますが、それに上気道の狭小化が重なると、中咽頭を完全に閉塞し、無呼吸状態になりやすくなります(閉塞型睡眠時無呼吸)。

そのため、大変大きなイビキをかくようになります(上気道の狭小化が乱流を生じ、軟口蓋を振動させ、大きなイビキを生じます)。そしてイビキがしばらく止まり、あえぐような息やイビキで呼吸を再開します。

また、無呼吸が持続しますと血液中の酸素濃度が急激に低下し、その結果、肺循環系や体循環系が大きな影響を受け、肺高血圧症や高血圧症の原因になります。さらに上気道の閉塞と血液酸素濃度の低下により副交感神経(迷走神経)が刺激を受け、徐脈や致命的な不整脈の原因になり、突然死や睡眠時死亡の危険も生じます。また心筋梗塞や脳卒中の原因にもなります。

肥満にともなう睡眠時無呼吸は、単に一個人の問題ではなく、社会的な影響も大きいことが懸念されています。睡眠中の無呼吸は急速な脳の酸素不足をもたらしますので、体の防御反応として、覚醒し呼吸を再開しようとします。その結果、眠ってもすぐに覚醒するような状態になり(睡眠の断片化)、いつも眠く、熟睡できなくなり、さらに著しい昼間の眠気をもたらし(日中傾眠)、労務災害や交通事故の原因になるのです。

この病気による居眠りは、自分では寝たつもりがないのに、ふと気がつくと空白の時間が過ぎていた、というもので、運転中ハッと我に返ると、目の前に車が迫っていた、という場合もしばしばです。

実際の交通事故の1割が睡眠時無呼吸症候群によるという報告があります。日本における患者数は約200万人と推定されていますが、実際に治療を受けているのは、そのうち1万5千人程度と考えられています。男性に多く、50歳代をピークに40歳後半から60歳代にかけてみられます。

減量は絶対条件ですが、睡眠中の無呼吸治療には経鼻持続陽圧呼吸療法(NCPAP)と呼ばれる治療法が有効で、睡眠中、鼻にマスクをつけて機械で空気を強制的に送り込み、上気道を押し広げ、呼吸状態を改善します。手術的にのどの奥を拡げる治療もあります。



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