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9. ぶどう糖によるコラーゲン

9・1 コラーゲン (膠原質)および膠原繊維 (コラーゲン繊維)


コラーゲン (コラゲン;コラジェン)は膠原質 (こうげんしつ) とも呼ばれ、水に不溶性の蛋白質です。
人体には、多量のコラーゲンが存在し、その量は身体の全蛋白質の約 30% です。
コラーゲンは、細胞内で合成された後、細胞外に分泌され、細胞外で機能します。
コラーゲンには、1 型-12型の 12 種類があります。
4 型コラーゲンなどの少数の型は非繊維性ですが、他の型のコラーゲンは、細胞外で、多数のコラーゲン分子が集合し、異なる分子間で架橋され、コラーゲン小繊維になります。
続いて、多数のコラーゲン小繊維は束状に規則正しく集合し、集合したコラーゲン小繊維は、さらに架橋され、膠原繊維 (コラーゲン繊維)になります。
12 種類のコラーゲン中で、1 型と 3型は他の型より遙かに多く、ほとんどどの組織に存在します。
1型コラーゲンは、皮膚、筋膜、腱、靱帯および骨に含まれます。
1型コラーゲンは、筋肉組織と骨を接着すると同時に、補強する役割を持ち、極めて強靭です。
2型コラーゲンは全ての軟骨および椎間板に存在します。
4型コラーゲンは基底膜の主な成分です。
5型コラ-ゲンは少ししか存在しませんが、胎盤および血管に含まれます。
コラーゲン分子は、他の蛋白質に比して、遙かに多量の 2 種のアミノ酸 (グリシンとプロリン) およびヒドロキシプロリンを含んでいます。
ヒドロキシプロリンは、酵素 (プロリル・ヒドロキシラーゼ) によるプロリンの修飾 (ヒドロキシル化) によって生成されます。
プロリルヒドロキシラーゼが活性を発現するためには、アスコルビン酸 (ビタミン C) が必要です。
ビタミン C が不足すると、正常な膠原繊維が形成されないために、膠原繊維によって構造が支えられている皮膚や血管が脆くなり、傷が治癒し難くなったり、壊血病に罹ります。

9・2 クリスタリン


眼の水晶体に特異的に存在する水溶性蛋白質をクリスタリンと総称します。
クリスタリンは透明な蛋白質であるので、クリスタリンと命名されました。
クリスタリンは複雑な複合体を形成することによって透明化していると考えられています。
クリスタリンは α-、β-、γ- および δ- の四つのグループに分類されます。
鳥類と爬虫類の水晶体は α-、β- および δ-クリスタリン、そして他の人を含む脊椎動物の水晶体は α-、β- および γ-クリスタリンを含みます。

9・3 結合組織、基底膜および細胞間隙

9・3・1 結合組織


体内で、組織や器官は遊離して存在するのではなく、結合組織によって結びつけられています。
結合組織は細胞成分 (遊離細胞) と細胞間を埋める間質からなります。
細胞成分に比して、間質の方が大きい容積を占めます。
間質は繊維成分と無定形のゲル状の物質で構成されています。
繊維成分として膠原繊維 (コラーゲン繊維) が存在します。
膠原繊維は張力に対して強い抵抗性を示し、組織や器官を支持する役割を持ちます。
結合組織の例として、皮膚の表層の構造を図示します。
     



9・3・2 基底膜


基底膜は下記の部位に存在する厚さ 50-80 nm (1 nm = 10-9 m) の層構造です。
皮膚などでは、上皮細胞層 (皮膚では基底細胞層) と結合組織の間に存在
腎臓では、2 種の細胞 (上皮細胞層と内皮細胞層) の間に存在
末梢神経のシュワン細胞、筋細胞、脂肪細胞などでは、細胞全体を取り囲んで存在
基底膜は、上皮細胞層に近い側から希薄層 (透明層)、緻密層および網状層の三層に区別されます。
希薄層 (透明層)および緻密層の二層をまとめて基底層と云います。
基底層は、上皮細胞から分泌される 4型コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ラミニンを主成分として形成されています。
基底層中のラミニンは 4 型コラーゲンおよび上皮細胞膜のラミニン受容体と結合して存在します。
網状層は、繊維芽細胞から分泌される 1型および 3型コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチンなどを含みます。
網状層中のフィブロネクチンは膠原繊維 (コラーゲン繊維) および繊維芽細胞膜のフィブロネクチン受容体と結合して存在します。
一般に、基底膜は、水溶性の低分子を通過させますが、高分子を通過させません。
ちなみに、癌や肉腫は、基底膜を破壊して増殖するとき (浸潤性を示すとき)、その悪性度が高くなります。

9・3・3 細胞間隙および細胞間結合


組織を構成する細胞間には間隙が存在し、この間隙を介して物質の通過や排泄などが行われます。
細胞間隙を相互の細胞を接着するための構造は細胞間結合と呼ばれます。
細胞間結合には次の四種があります。
密着結合:2 個の細胞間の液体の流通を遮断
接着帯:周囲の細胞に付着することによって組織の強度を増強
デスモソーム (接着斑):接着帯と同様に、周囲の細胞に付着することによって組織の強度を増強
ギャップ結合:隣接する細胞間でイオン、低分子、高分子の流通を可能にしている連絡結合

9・4 肝臓の構造

     図 肝臓被膜 (グリソン嚢)と、肝臓内を走る動脈、門脈および胆管を被うグリソン鞘

肝臓の表面は膠原繊維を成分とする被膜 (グリソン嚢) によって覆われています。
グリソン嚢は肝臓の強度を高めるために役立っています。
肝臓中の静脈、動脈、門脈および胆管の中で、動脈、門脈および胆管は、一般に、互いに寄り添って肝臓内を走り、その周囲の大部分 (細胞に囲まれていない部分) は、グリソン嚢の延長であるグリソン鞘によって囲まれています。
   
肝臓の表面は、厚い膠原繊維 (コラーゲン繊維) を含む繊維性結合組織の被膜 (グリソン嚢) によって覆われています。
グリソン嚢は、表面上の多くの部位で、肝臓内へ入り込み、肝臓を多くの部分 (肝小葉) に区分しています。
グリソン嚢中で、肝臓内へ入った部分はグリソン鞘あるいは血管周囲繊維鞘と呼ばれます。

9・5 心膜および冠状動脈の構造


心臓全体および心臓に入る大血管の基部は結合組織性の膜 (心膜)で二重に取り囲まれています。
心膜腔に存在する心膜液は心膜と、その周囲に位置する臓器との摩擦を減少させます。
冠状動脈は、心臓壁に冠状に分布し、左右の 2 本からなり、心臓に栄養を送ります。
     


9・6 筋肉、骨および関節の構造
筋肉の全体はコラーゲンを主成分とする基底膜で取り囲まれています。
骨には、細胞成分として、骨芽細胞、骨細胞および破骨細胞が存在します。
骨の細胞成分は骨の約 2% にしか過ぎず、残り 98% は基質です。
基質の約 95% は1 型コラーゲンです。
1型コラーゲンは、骨に加えて、腱、靱帯、皮膚にも多量に含まれます。
関節の主成分は 2 型コラーゲンです。

9・6 老化架橋


ぶどう糖が高濃度に存在すると、ぶどう糖は、基底膜や結合組織のコラーゲン、眼球レンズ中のクリスタリン、神経細胞膜の膜蛋白質などのリシン残基およびアルギニン残基のγ-アミノ基と反応し、シッフ塩基の形成を経て、アマドリ生成物を生成します。
ぶどう糖と同様に、果糖もアマドリ生成物を生成します。
   
生じた複数のアマドリ化合物が反応し、アマドリ生成物の間で、ぶどう糖由来の架橋 (FFI) が形成されます。
FFI によって架橋された蛋白質は終末糖化生成物 (AGE) と総称されます。
ぶどう糖と同様に、果糖も AGE を形成します。
AGE は advanced glycation endproduct の略です。
AGE は黄褐色の硬い物質であり、老化につれて増加します。
過度の量の AGE は糖尿病性慢性合併症の主な原因です。
糖尿病患者では、低比重リポ蛋白質 (LDL) のアポ蛋白質および脂質の両方が、健常人より多く AGE 化されていることが判明しています。
過度の量のAGE が眼球に形成されると、白内障や緑内障を引き起こします。
過度の量のAGE が神経細胞膜表面の蛋白質に形成されると、最初の自覚症状として、インポテンス (ED: 勃起不全; 陰萎) を引き起こします。
膠原繊維中のコラーゲン分子の構造は約 40℃ で崩壊し、多数個の異なるコラーゲン分子が互い違いにアルドール縮合した状態で可溶化されます。
膠原繊維の可溶化物 (変性コラーゲン) はゼラチン (ゲラチン) と呼ばれ、過去、膠 (にかわ) の名称で接着剤として用いられました (膠原の名称の由来)。
コラーゲン入りと記載されている薬品、化粧品などの含有物はゼラチンであり、コラーゲンではありません。
ビタミン C はコラーゲン合成を促進しますが、美白効果を持ちません。
砂糖、ぶどう糖、果糖などの過剰摂取によって増加する AGE は黄褐色であり、皮膚を黄褐色化すると共に、皮膚を硬直化します。


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