ほんとうの虫歯の発生メカニズム虫歯は金属腐食の一種だよ、というお話をしてきましたので、虫歯の具体例をいくつか見てみようと思います。 表題画像はC3と呼ばれる神経に虫歯が達して痛みが出ている状態です。 今ではこのような状況でも神経を取らないで済むようになっていますが、 実験室レベルではこのような深い虫歯を発生させることはできていません。 このタイプの虫歯はよく見かける症例で、 意外に思われるかもしれませんが、 歯科医学ではこのような深い虫歯ができるメカニズムは解明されていないのです。 なぜかというと、 不思議なことに歯科医学では100年以上も、 虫歯は酸蝕症(細菌が出す酸で溶ける)だと言われつづけられており、 歯医者も単純にそう思い込んでいるからです。 細菌が出す程度のpH4程度の弱い酸ではこのような虫歯はできません。 実験的(人工口腔装置等による)には、せいぜいホワイト・スポットと称される エナメル質表層の脱灰、溶出が再現できる程度です。 この程度の初期の虫歯でさえ、pH4程度の弱い酸に漬け込んだくらいでは出来ません。 しかし、歯科では理由は解らないが 細菌がいないと虫歯はできないようだとは思われていて、 虫歯ができる条件は 歯、虫歯菌、糖質(虫歯菌のえさ)の3つがそろわないと いけないとされています。 そこで、歯の表面に虫歯菌の代表と言われているミュータンス菌を培養して、 虫歯を作る実験をしています、ご苦労なことです。 ミュータンス菌に砂糖を与えると、不溶性グルカンという粘着性の物質を作り、 ミュータンス菌は強固なバイオフィルムを形成します。 そのバイオフィルムの下は脱灰され、 電子顕微鏡でやっと見える程度のくぼみが出来ます。 ![]() これを肉眼で見るとホワイト・スポットと呼ばれる初期の虫歯に見えます。 でも、ここまでです。 歯医者はバイオフィルム下のpHを測るとpHが下がっている(酸が発生している)ことだけを見て、この脱灰現象を歯が細菌が出す酸に溶けた結果だと 単純に思い込んでいますが、 ここには、全く電気化学的な視点が欠けているのです。 この程度の初期の虫歯でさえ、pH4の虫歯菌が出す弱い酸では作ることはできません。 一般には金属は酸に溶け、 金属が酸に溶けることも金属腐食の1つではあります。 ただ、金属腐食はこれだけではありません。 金属腐食の基本は、 酸化・還元作用、つまり電子のやり取りの結果、 金属が溶出することです。 つまり電気化学的な現象の1つなのです。 簡単な実験をすると、 歯も金属として取り扱うことができることが確認できますので、 虫歯も金属腐食の一種とみなせます。 本当のホワイト・スポットの発生メカニズムは、 バイオフィルムの内外で酸素の濃淡が生じ、 通気差腐食が起こることです。 これを工業分野では微生物腐食と呼んでいます。 微視的には局部電池が形成され、 電子のやり取りが行われておりその結果が腐食、 歯科で言うところの脱灰なのです。 アノードになったところが溶けます。 ![]() 局部電池間に流れる電流をガルバニック電流と呼ぶことは 歯医者は知っています、歯学部で習いますから。 ただ、異種金属間(種類の違う銀歯や金歯の間)に流れるものと思っているだけで、 歯と金属間や、歯と他の体の部分との間、歯の表面の局部間などでも 流れているとは思っていないようです。 局部的にかつ持続的にガルバニック電流が流れるからこそ、 特定の部分に深い虫歯ができるわけです。 うちではこの2年程、 太陽電池で発電した電気をバッテリーに溜めて使う生活をしているのですが、 電池(バッテリー)というものは、 数百アンペアという人間など瞬時に黒こげにしてしまう程の大電流を 数時間にも渡って発生させる能力があり、 実際に使ってみると初めてその電気化学反応のものすごさを実感できます。 プリウスを電動モードで走らせても分かりますね、 あんな重たいものを動かすのですから。 電池という化学反応により電流が流れる現象は、 その取り扱うエネルギーの大きさは意外に大きいものであり、 これくらいのエネルギーがないと虫歯という目に見えるほどの 大きな歯の腐食は起こりようがないのです。 こう考えないと、虫歯のメカニズムは永久に解明されないし、 深い虫歯の原因を見つけることもできないはずです。 歯科医学では試験管レベルで深い虫歯の発生を実現できていませんが、 視点を変えればそれはできそうだ、と判りますよね? 一般のエンジニアの皆さんなら思いつくはずです(^-^)v 僕も思いつきましたよ。。 参考文献 1、丹治研究室 Tanji Laboratory ホームページ 東京工業大学 大学院生命理工学研究科 生物プロセス専攻 生物機能工学講座 生物化学工学分野 2、電顕写真は日本歯科医師会会報より抜粋 3、亜鉛による防食 |