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I歯科医院の高楊枝通信。

I歯科医院の高楊枝通信。

虫歯は金属の錆や腐食と同じ0.52(虫歯の電気化学的解析)

前回​、以下の四角の枠で囲んだ部分の虫歯の象牙質、エナメル質の電気化学的な説明をする予告をしていたので、面倒なんだけれど、ちょっとだけ。

あちこちの記事で書いているが、虫歯ができるには2つの条件が重ならないとできない。

その2つの条件とは、
1、歯質が水素イオンを含む電解液中にあること
2、歯質の内外に電位差が生じること

の2つだ。どちらか一方では虫歯にはならない。

1、は具体的には酸性水溶液中に歯が存在することで、2、の電位差の発生原因としては今の所、異種金属間の自然電位(イオン化傾向の違い)によるもの、酸素の濃度差によるものが代表的なものとして知られている。

2、の2つの腐食の形態は金属の場合には「​異種金属接触腐食​」と「​通気差腐食​(酸素濃度差腐食)」が知られているが、歯の場合も基本同じだ。ただ違うのは金属に流れる荷電粒子(電流)は電子だが、​歯質の場合は水素イオン​になる。これらは相補性があるので、電流の向きが反対になるだけで同じように取り扱うことができる。






以下の図は「​異種金属接触腐食​」の図で、リンク先の解説を参考にして欲しい。

ここでよく上げている動画はこのことだ。
db7376d164d23a8cb79236ff3723dfa9e78cd7fb.13.2.9.2.gif
http://www.yoshizaki-mekki.co.jp/eigyou/aen/zn.html



以下の図は「​通気差腐食​(酸素濃度差腐食)」のもので酸素濃度勾配があると起電力が発生するという現象がある。これもリンク先を読んで欲しい。




以下の図は​​「微生物腐食」​の内 、酸素濃度勾配がある場合のもので、​歯の場合のプラーク下のエナメル質の脱灰現象(白くなる)もこれに相当する。


最初の画像の四角の枠を拡大したのが下の画像だが、
エナメル質にクラック(ヒビ)が入っているのが見えると思う。咬合性外傷の所見だ。
そのヒビから電解質(水素イオン含む)が歯の内部に侵入してくる。というのが前提。

下図の説明だが、Eは健全なエナメル質、E'は脱灰(溶け)始めたエナメル質、Dは象牙質だがミネラル成分(カルシウム、リン酸)が溶け出してしまっていて、コラーゲン繊維等の有機質だけになっている。これが虫歯だ。触るとブヨブヨと柔らかい。

エナメル質と象牙質では象牙質の方がイオン化傾向が高い​。要するに酸性溶液(水素イオン含む)中に浸漬すると象牙質が溶け、エナメル質は全く溶けない。
これが「​異種金属腐食​」だ。

ところが象牙質のミネラル成分が溶け切ってしまうと今度はエナメル質自体が溶け始める。それが白濁した部分で「​通気差腐食​」が進行しつつあるということだ。エナメル質の外側と軟化した象牙質に接したエナメル質の外側を比べる内側の方が酸素濃度は低い。

具体的な電気的溶解の機序はどちらの腐食形態も歯の内側がマイナス電位になり、プラス電位側(この場合歯の外側)から水素イオンが内部に通り抜け、出る時にカルシウムイオンから電子を奪い水素イオンは水素ガスに、カルシウムはカルシウムイオンになり歯の結晶構造が破壊され歯が溶ける。これが虫歯の正体だ。

臨床的にはエナメル質が白濁していればそれに接する象牙質は歯質としてボンディング材の接着性は失われているので、除去するしかない。白濁したエナメル質の接着性は弱くなっているが、完全になくなっているわけではないのでカバーするようにCRで覆えば、全部削る必要はない。
この症例ではエナメル質のクラックが多いので白濁エナメル質は除去している。

このように「​虫歯の電気化学説​」が一般化すれば、虫歯に対する理論的な対応ができる。今までの歯科医学は虫歯の成因すら分からず、闇雲に対症療法を繰り返してきただけに過ぎない。



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