30代男性、右上6、歯牙破折
骨を誤って噛んでしまって欠けたということで来られた。画像をよく見てみると、僕が24年程前にしたインレー修復ではないかと思い始めた。
グラスアイオノマー系の合着セメントは脱離していて、硫酸塩還元細菌の代謝産物の硫化鉄に覆われて黒くなっていたが、
結果的にはカルボ系の覆とうセメントにより大事に至らなかったということだろう。
亜鉛が含まれているセメントは歯質よりイオン化傾向が大きいのでカソード防食効果がある。
これは虫歯の電気化学説的には常識だろうと思う。
虫歯は何らかの起電力によりハイドロキシアパタイト中を通り抜けたプロトンが外部に出るときにCaから電子を奪い、ハイドロキシアパタイトが崩壊することにより起こるが、亜鉛がカルシウムの代わりに電子を放出して身代わりになる。
カルボ系覆とうセメントの下は黒くなっているがこれはサホライドだと思う。当時はα-TCPセメントを導入していなかった。サホライドを塗った後の黒変は硫化銀または酸化銀だと思われるが、これはプロトン伝導を阻害するものと思われ虫歯の進行を抑制する効果がある。
実像と鏡像をそれぞれ時系列でアップする。
この症例ではストリップスを使っていない。大きく欠損している場合は使わない方が上手くいく。
もちろん虫歯は細菌感染症ではないので、感染に気をつける必要はない。
ラバーダムはナンセンスだ。そもそも歯肉縁ギリギリではラバーダムの装着は無理だろう。
むしろ接着面が唾液で汚染してボンディングプライマーの接着力が落ちないように気をつけねばならない。
今回はCRでの再建過程を詳しくアップしている。同業者の方はトライしてみてください。
では実像から
鏡像