カテゴリ:近未来の根管治療シリーズ
9歳男子、右下E 、Per+ 右下6、隣接面カリエス、咬合性外傷
Perというのは虫歯から歯髄に細菌が入って腫れたりすることで、日本語では根尖性歯髄炎という。 よくあるケースではあるのだが、最近はあまり見ないので、画像をアップしておきたい。 隣接面カリエスの成因についてはどこかで解説したような気がするが、記事は失われてしまったかもしれない。 これか?この時はまだ水素イオンの流れは登場していない。 https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/201203300001/ 「虫歯の電気化学説」的には要因はいくつか考えられ、 1、咬合性外傷による微細なクラックや応力腐食割れ部分が他の健全歯質部分よりイオン化傾向が高い腐食電極になる。 2、2つの歯に挟まれた狭い空間なので、酸素濃度が低く酸素濃淡電池のマイナス極(腐食電極)になる。 3、同様に狭い空間に細菌が繁殖すると酸素濃度が低くなるだけではなく、酸性環境になりやすい。 4、2つの歯が近接もしくは接触しているので、この部分にイオン伝導が集中しやすい。 などがある。 初診時の顔は腫れており、小児科に行くと抗生剤の点滴を受け、このまま入院が必要になるかも?と脅かされたそうだ。とりあえず歯医者に行け!と言われて、来られた。 確かに抗生物質のない時代、昭和30年代以前はPerから蜂窩織炎や菌血症、敗血症で命を落とす人は多かった。 最近は抗生物質の効かない細菌も増えてきているようで、まだ1症例しか遭遇していないが、その場合は入院して抗生物質以外の消毒薬で洗浄を繰り返すしかない。 幸いこの子の場合はそうではなかった。 レントゲン写真ではEの遠心の虫歯は歯髄と交通しているように見える。この部分から細菌感染したのだろう。6の近心にも小さな虫歯が見える。 冠部歯髄の上にある天蓋を除去する過程は歯科医師以外は見ることが難しいと思うので供覧したい。 近心根の髄角部分からは出血している。まだ歯髄が生きている可能性があるか、5番の歯嚢部分から出血しているのかもしれない。 近心根はその場で根管を超音波洗浄して抗菌剤添加α-TCP+α-TCPセメントの二重仮封で根管充填した。 遠心根は感染による炎症がひどいかもしれないと思って根管充填は1週間待つことにしてオープンにした。 エンドチップで触った感じでは、それほどひどい感じは受けなかったので、近くの子なら根菅充填してしまうところだが、遠方なので、抗生物質投与で経過を見ることにした。 で、1週間後。 まず6番の隣接面カリエスの処置をすることにした。 この矢印部分の噴火口状の部分はイオン(水素イオン)が通り抜けた部分で、もっとも虫歯の進行している部分だ。水素イオンが何らかの起電力に引かれて、歯から飛び出す時に歯のカルシウムから電子を奪ってカルシウムイオンとなって溶出し、歯質のハイドロキシアパタイトの結晶構造が壊れるのが虫歯だからだ。 このように特に硬組織の病変に関しては電気化学的な視座がないと全く理解できない。 早く歯科業界は追いついてもらいたいものだ。 遠心根も2根あったが、超音波洗浄してα-TCPセメントで根菅充填してCRで歯冠を再建して終わった。 超音波洗浄時に出血が見られたが、そのまま根充している。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021/09/16 11:25:48 PM
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