40代男性、左下7、遠心歯根面カリエス、沁みる
8番(親知らず)が7番の遠心にひっかって萌えて(生えて)これない症例はよく見かける。
問題なのは1つ前の7番の深いところが虫歯になることだ。歯根面(象牙質)が虫歯になるのはエナメル質(歯冠)と比べるとイオン化傾向が高いからだ。
もっと若い頃に頑張って抜歯するべきだったのだが、今となっては遅い。
通常の診断では8番も7番も抜歯になる可能性が高い。直視もできず、器具も届かず、穴を塞ぐこともできないので薬液が漏れ、細菌の侵入も防げないので神経を取ることもできず、深すぎて型取りもできないからだ。
CR充填ができるとすれば7番を助けることができるかもしれないが、非常に難しいのでこれがスーパーテクニックの所以だ。
CR充填が上手くいっても、この後親知らずを抜く時に7番がテコの支点になり強い応力がかかるのでCRの接着剥がれが起こり微小漏洩から神経が死んでしまうことがある。親知らずを抜くことも、おいそれとは勧められない。
いずれにしろ予後は不良だ。
抗生剤がなかった頃はこのような歯の周囲に細菌感染すると死亡することがあった。昭和30年代までは親知らずをこじらせて死亡するケースはよくあったと言う。
虫歯部分は直視できないので、咬合面と頬側から大きく削ってを虫歯部分にアクセスした。削ると言っても麻酔は使っていない。痛くない範囲で削っている。エナメル質と虫歯は痛くないのだ。
この処置には2時間近くの時間がかかり、患者も僕も体力の限界に来ていた。長時間口を開けているのも辛いし、僕も腕が上がらなくなる。僕も高齢化でスーパーテクニックが辛くなってきた。
では時系列でどうぞ
左端にちょっとだけ親知らずが見える
最初はこのくらい削って処置をしようとしていたが、
到底無理だった
絶望的な深さだし、全く見えない。頭の中に映像を作りそれを見ながら削っていく
頬側にもCRで充填した跡があったので、そこから内部を見ようとしてみた
拡大画像。親知らずもだいぶ見えてきた。親知らずを先に抜くと、虫歯部分が歯肉に覆われてCR充填処置ができない
3MIX+α-TCPで虫歯部分を覆ったのだが、見えない
α-TCPがちらっと見える
1次CRだが、途中の詳細画像を撮る余裕はない。ほっぺを引っ張りながらの充填作業だからだ。
いきなり充填終わりの画像になる