カテゴリ:スーパーテクニック・シリーズ
30代男性、左上6、歯冠破折、温冷水痛+
日頃からストレスフルな生活をされているようで、咬合性外傷(食いしばり等)によりクラックから虫歯、さらに歯冠が破折したようだ。 破折面は歯肉縁下に達していたが、今回は幸いなことに歯根は垂直性に破断していなかったので抜歯・再植の必要性は免れた。しかしクラックはある。今後破断する可能性は高い。 歯根が縦に破折したときはもちろん、歯肉縁下に及ぶ欠損は通常は修復不能につき抜歯になる。通法では抜歯にしないためには歯冠をカットして歯根だけにして矯正的に挺出(pull up)させて根管治療して、コアの作成、クラウンの作成と進むと言うのがある。 また歯肉縁下をCRで充填して根管治療、コアの作成、クラウンの作成と進む方法もある。 これらの場合は歯髄の保存はできない。神経は取らざるを得ないと言うことだ。 しかし歯肉縁下も含め一挙にCRで修復できるとすれば歯髄(神経)も保存できる可能性がある。 歯肉縁下のCRは歯肉が被さっている場合は特に難しい。歯肉切除が必要になり出血のコントロールが難しいからだ。この症例でもボスミンでは止血が困難だったので、止血待ちにトータル30分以上かかった。 それでもボンディング処置時間20秒が待てなかった。その間に血液が接着面に押し寄せる。接着面が血液で汚染すると接着不良になる。 何度も象牙質の新鮮面を出しボンディング処置を繰り返した。 では時系列でどうぞ 処置前 破断面を歯肉が覆っている。近心隣接面にも多分クラックがある。黒色物質の細菌代謝産物の硫化鉄FeSがあるように見えるからだ 麻酔下で電気メスで歯肉切除した。こうしないとCRで覆えない フィニシングラインの新鮮面を出した後だが、少なくとも2、3カ所露髄している。内部はほとんど軟化象牙質(虫歯)だ 上の露髄部分はバーが当たった。一瞬痛かったはずだ。下の露髄部分は軟化象牙質のフタをめくったら現れる。スプーンエキスカベーターでほじったら露髄したので、そっ閉じした。この上を3MIX+α-TCPで覆うしかない。普通の歯科医師は何が起こっているのか全く解らないはずだ。こんなことができるなどと言うことは現代歯科医学の常識では考えられないからだ。 しかも歯根に垂直性のクラックがある。処置後も対策を取らねば近い将来完全に破断する。 3MIX+α-TCPを充填して硬化待ちの間にも血液が浸潤してくる φ1mmのラウンドバーで新鮮面を出すときに露髄部分(そっ閉じ部分)が露出したかもしれないが確認できない。あったとしてもCRで覆えば大丈夫だ。 何度も止血処置を繰り返したので周囲が血液で汚れている ここからCR充填が始まる デンタルフロスもちゃんと通る 破折部分は咬ませていない。少しでもCRが長持ちするように。この後はナイトガードの作成予定。クラックが広がるのを少しでも遅らせるために。 感染予防のために抗生剤1日分投与。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024/12/06 01:35:49 AM
コメント(0) | コメントを書く
[スーパーテクニック・シリーズ] カテゴリの最新記事
|
|