#アップして見直したら穴が開く前の画像がありませんね。
そのうち見つけてアップ予定です。
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12歳女性、左下5、咬合面カリエス
Opusさんのご質問にお答えしようと思いまして。
咬合面に大きな穴はないのに、内部の象牙質だけに虫歯が進行していて、気が付いたら中身が失われているという虫歯はままある。
今回の症例は小臼歯の咬合面なのだが、これは珍しい。大臼歯にはよく見かける。
元々咬合面の裂溝や窩と呼ばれる深い溝や窪みから虫歯になるパターンだと思う。これら
発生学的に生じる問題点で歯科の写真集には必ず掲載されている。
歯科カラーアトラスより転載
この穴の奥は酸素濃度が低いために酸素濃淡電池を形成しエナメル質が電気化学的に壊れる。
溝の奥のエナメル質が溶けて象牙質が剥き出しになると今度はエナメル質と象牙質間のイオン化傾向の違いにより腐食電池を形成し、見事に
象牙質だけが溶ける。見た目は大きな穴があるようには見えない。
現代歯科医学の解釈では小さな穴から内部に虫歯菌が侵入しそれが増殖しつつ内部を酸性にして歯を溶かすとしているが、実際は内部の軟化象牙質を位相差顕微鏡で見てみてもほとんど細菌はいない。
これはいつも引用させていただいているメッキ屋さんのサイトの鉄の錆のgifファイルだが、まさに虫歯と同じものだ。
これを一般には
異種金属接触腐食と呼んでいる。
http://www.yoshizaki-mekki.co.jp/eigyou/aen/zn.html
上の2つの画像を使ってもう少しイオンや電子の動きに注目して解説してみます。
エナメル質と象牙質を酸性溶液中(水素イオンが多い中)で接触させると、イオン化傾向(自然電位の差)の違いにより、
エナメル質が+(プラス)になり象牙質がー(マイナス)になる。
歯質(エナメル質も象牙質もハイドロキシアパタイトが主成分)には
電子は流れないが水素イオン(H+、プロトン)は流れるので、外側(エナメル質側)から内側(象牙質側)に向かって水素イオンは流れる。
水素イオンが象牙質から外に出るときに歯質を構成しているCa(カルシウム)から電子を奪い水素イオンは水素ガスに、Caは電子を奪われCa2+(カルシウムイオン)になり象牙質から溶け出す。こうして
象牙質だけが溶けていく。
このように電位差が生じるイオン化傾向の差の他に、酸素濃度差による電位差も加わり虫歯の進行を加速させる。
これがこの手の虫歯の真実だ。
虫歯の穴の中に細菌がいる必要性はない。
では時系列でどうぞ
この虫歯は軟化象牙質を全部除去すると露髄するので、神経を取らざるを得ないとされているのだが、α-TCPを使えば歯髄は保存可能だし、軟化象牙質も再硬化する。