30代女性、左上5、遠心CR
多少動揺があるので咬合性外傷があるように見える。沁みるとか時々ジンジンするとかの症状があるが、虫歯系の症状とは区別が付きにくい。以前CR充填をしたことがあって、その時も歯肉縁下に及ぶカリエスだったので出血した。出血するとボンディング剤の接着不良が起こることがあり、辺縁漏洩があるのかもしれないと思って再治療に踏み切った。
今回もかなり出血したので歯肉に限局した麻酔をして電気メスで歯肉切除した。電気メスのチップが歯根に接触すると電気ショックを感じたらしいので歯髄はまだ生きているようだ。
既存のCRを除去してみたが、前回のα-TCPは綺麗だったのでひどい漏洩があったようには見えない。
α-TCPを使って歯髄を保存するには辺縁漏洩があると失敗するので、CRのボンディングシステム以外では上手くいかない。印象(型取り、スキャニング)してインレー・クラウンを作るケースでは漏洩するので失敗すると思って良い。α-TCPを使い印象してインレーを作る場合は内部の歯質はCRで覆う必要があり、その上にインレーをセットするという形になる。かなり面倒な処置で治療回数もかかるので、その場でCR充填してしまった方が早い。多少技術的には難しいとは思うが、できないことはないのでチャレンジして欲しい。
このような歯髄に虫歯が達している症例では通常治療では神経を取ってクラウンを被せるということになるが、それでは5、6回の治療回数とそれなりの費用もかかり歯の寿命も短くなる。抜いてブリッジや義歯、インプラント等の治療回数のかかる悠長なことはうちのような野戦病院ではやっていられない。どうしてもその場で終わるしかないのだ。型取りしてCKを入れる治療でも2回で終わる。α-TCPが入手できなくなればそれも厳しいので困った。
歯肉縁下3mmくらいなので、しかもよく見えないので、歯肉に切削バーが触れて出血させてしまう。
白いのは前回(2、3ヶ月前)のα-TCP
これは今回のα-TCP。奥の歯肉側のCRも除去している。
ここからCR充填。ストリップス等は使っていないがフロスは入る。
オーバーしたCRはトリミングした。これで経過観察。