近未来の根管治療法1.8(食いしばりによる歯髄壊死)
30代女性、左下7、遠心歯肉腫脹、咬合性外傷(食いしばり)2年程前にCRで修復したのだが、今回歯髄が壊死している様だったので根管治療をした。その経過だが、6週間前突然食事中に咬合痛があったというので診ると動揺度2〜3だった為、スーパーボンドで左下6と歯牙固定。食べるのは楽になったが、日中時々拍動痛があった。それから1週間後に診ると固定した左下7だけではなく、左下6も一緒に動揺していた。咬合調整して早期接触を取り除き、拍動痛は無くなったが咬合痛は消退しなかった。その早期接触とは犬歯誘導ではなく臼歯部の側方運動時の咬頭干渉だった。2年前のCR修復時にはなかったので、その後咬合が変わったものと思われる。以前から就眠時に食いしばりの自覚があったので、上顎装着式の咬合面フラットのナイトガードを使用していたが、今回は当該の歯で食いしばりの自覚があったというので、就眠時無呼吸症候群用に近い上下歯列固定式のスプリントを作成した。しかし今日の治療の1週間前から遠心歯肉が腫脹し始めたので、レントゲン写真を撮ると歯槽骨の透過性が増していた。そこで歯髄壊死を疑い髄腔を開けて見てみた。この経過を見ていくと6週間前の咬合痛からその後の拍動痛の出現時に歯髄が壊死し始めたものと思われる。原因は噛み合わせが変わったことによる咬合性外傷や就眠時の噛み締めによる外傷性の歯髄炎と思われる。咬合性外傷による歯髄炎とは根尖付近の血管が外傷性に損傷し血栓等が歯髄の毛細血管に詰まることによる塞栓症だと考えられる。その後咬合痛が消退しなかったのは炎症による歯髄の分解産物が根尖口より歯根膜に波及し歯根膜炎が起こったことによると思われる。楕円部分の透過性が増している。左下7の遠心歯肉が腫脹している。髄腔を開けてみたが、腐敗臭も出血もない。細菌感染はしていない様に見える。超音波スケーラーの#15エンドチップは遠心根の根尖付近まで穿通した。近心根は知覚があったので、それ以上触ることはしない。そのままα-TCP+3MIXで覆えばよい。α-TCP+3MIXの精製水練りを遠心根にエンドチップで押し込んだ。α-TCP+3MIXの50%クエン酸水で練って硬化させて、CR充填ができるようにした。CRで緊密に充填した。CR以外のセメント合着による修復物では必ず微小漏洩が起こるので不可だ。これで経過観察する。症状が出た時点で対処する。