KINTYRE’S DIARY~旧館

2005/10/24(月)09:12

映画『キッチン・ストーリー』を観て

ヨーロッパ映画(125)

人気blogランキングへ 【この映画について】 この映画はいわゆるミニ・シアター系の映画で北欧のスウェーデンとノルウェイの合作映画である。 今年のアカデミー賞の外国語映画部門にもノミネートされた。この部門では日本の『たそがれ清兵衛』がノミネートされたが、授賞したのはカナダの『みなさん、さようなら。』(フランス語)だった。普段は馴染みの無い北欧の俳優が主役で女優が殆ど登場しないのも特徴だ。 作品のなかでは盛んに両国の文化の違いを強調するシーンが登場する。道路の通行の違い、機械の性能、食事、戦争時のとった態度とか何かに付けて皮肉を込めたセリフが多い。 ロケ映像はどんよりとした冬の映像が多いが、最後に春の映像が出てくることでそれまでの灰色の空との対比がクッキリとする。音楽はジャズっぽいのが目立った。 【ストーリー(ネタバレなし)】 話の発端はスウェーデンの家庭調査協会が「独身男性の台所での行動パターン」を調べる所から始まる。時は1950年でスウェーデンからキャンピング・カーを引き連れて大キャラバン隊を率いて隣国のノルウェイにやって来た。調査対象の家のキッチンで終日櫓の上から独身男性の行動をチェックする。だが対象者とは一切口を利いてはいけないという厳しい掟を守らなければ解雇される。庭に止めたキャンピング・カーに寝泊りするフォルケと調査されるイザックとサラにイザックの唯一の友人のグラントが話の中心。 始めはフォルケを家の中にさえ入れる事を拒んでいた堅物のイザックに手を焼くフォルケ。心を許すのは唯一友人のグラントだ。調査中もフォルケを受け入れないイザックだが、あるときイザックがタバコを切らした時にフォルケがタバコを差し上げたことで少しずつ打ち解けてくる。だがコミュニケーションを取る事は許されていないフォルケだが、徐々にそんな縛りを鬱陶しく感じ始める。寂しさを紛らせる為にグラントと話をするイザックだがフォルケとも話をするようになった。 しかし話をすることさえ許されていない調査だがフォルケの上司がたまにやってくるときにさえ気付かれなければ問題は無い。イザックとすっかり打ち解けてフォルケだがフォルケの上司が不意にやってきたときに怪しまれて、一度は逃れたが二度目は見付かってしまい解雇を言い渡される。フォルケは開き直ってここの居座ると宣言するが契約でそれは出来ないと言い渡されて衝撃を受けた。だが衝撃を受けたのはイザックのほうだった。折角親しくなれたこの隣国の友人が出て行くのをせめて間もなく訪れるX'MASまで待てないかと引き止める。そんな二人の親密な関係を察して嫉妬する友人のグラントが取った意外な行動とは(これは映画館で観てね)。 そして遂にフォルケが母国に向けて後ろ髪を惹かれる思いでキャンピング・カーを背負って発った。帰国の道中で調査の時の事を思い出しながら物思いにふける顔で運転するフォルケ。 そして車は遂に国境のゲートまで辿り着いたその時にフォルケが思いっきり大胆な行動に出て、上司のマームバーグは動転する。そこでフォルケが取った行動とは映画館で観てください。 【鑑賞後の感想】 この話の見所は、年をとった老人の家に調査に来たフォルケとその老人イザックが如何にして打ち解けていくかの過程が面白かった。最初は調査に応じたが家に入れる事さえ拒んでいて、いざ家に入れる事を許可してもキッチンには殆どいない。これでは調査の対象にもならないで戸惑うフォルケ。そんな様子を階上の床に穴を開けて覗き込んで悦に入るイザックの行動や、その二階で料理器具を持ち込んで料理をして調査をさせない頑固さ。こうした老人特有の閉鎖性もよく描かれていた。更に、お互いが徐々に打ち解けていきそのうちグラントさえ間に入れないほど親密になった二人。 日本もそうだがこの北欧の国も独身者が多い国らしい。普段は一人で生活して寂しいのだろうが、いざこうして仲良くなると話に花が咲くのはどこの国でも似ているみたいだ。 映画のラストシーンはばらす訳には行かないが、フォルケが出て行った直後に何かが起きてそれがラストにまた微笑ましいシーンにとつながって終わる。 どこか時間が止まったかのようなのどかな、そして厳しい自然の中での生活がとても見る物を和ませてくれるそんな映画だった。

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る