KINTYRE’S DIARY~旧館

2006/04/09(日)23:09

映画『シリアナ』を観て

原題:Syriana(アメリカ)公式HP 上映時間:128分 監督・脚本:スティーヴン・ギャガン 出演:ジョージ・クルーニー(ボブ・バーンズ)、マット・ディモン(ブライアン・ウッドマン)、ジェフリー・ライト(ベネット・ホリディ)、クリス・クーパー(ジミー・ポープ)、ウィリアム・ハート(スタン・ゴフ)、アマンダ・ピート(ジェリー・ウッドマン)、クリストファー・プラマー(ディーン・ホワイティング) 【この映画について】 この作品が扱っているテーマが中東での石油ビジネスに関連する取引きを中心としていることで、アメリカでも注目を浴びた問題作であり多くの賞を授賞した。その中には今年行われたアカデミー賞で、ジョージ・クルーニーが念願の助演男優賞を授賞している。今では多額のギャラを稼げるクルーニーが友人のマット・ディモンらと共に、破格の安値で出演するほどこの映画の脚本に惚れこんだそうだ。クルーニーは製作総指揮としても携わっており、この映画に賭ける情熱は並々ならないものが伺える。 脇を固める俳優陣らも、エゴを捨ててこの映画に出演できるなら役にこだわらないという姿勢で積極的に協力したそうだ。そうしたスター達が惚れこんだ脚本は、複数のストーリーがどこかで絡んで行くと言った展開なのでしっかりとスクリーン上の進行を追っかけていないと理解出来なくなる。 日本人にはこうした石油関連ビジネスの概念が掴みづらいが、映画では徹底的なリサーチをしたそうなのでスクリーンを通してそれらを感じることが出来れば良いだろう。 【ストーリー(ネタバレなし)】 CIAベテラン工作員ボブ・ハーンズはアラビア語など中東の言語にも精通した、現場一筋の人間で2基のミサイルの売買でテヘランに滞在中だった。1基は予定通りの売買であったがもう1基の引渡しに失敗する。 中東の某国の石油会社でパキスタン出身の出稼ぎ労働者親子であるワシームとその父は、或る日、経営者側からいきなり石油の採掘権が中国系企業に売買されたと告げられてショックを受けるが、アラビア語を理解出来ない父は事態を飲み込めないが、息子のワシームに教えられてやっと事情を理解できた。 採掘権を奪われた米国系企業のコネックス社は、その背後にハマド王の息子で次期国王候補の改革派のナシール王子が契約を仕切り中国系企業に売却した。コネックス社は巻き返しを図るために、新興石油会社のキリーン社との合併を進めることになった。この合併を仕切るのは首都ワシントンの弁護士ベネット・ホリディと彼の所属する法律事務所だった。それは、司法当局より先にキリーン社の不正を発見しコネックス社に有利な条件で合併を働きかけることだった。この事業に成功せうれば、ベネットには大出世の道が開けるため彼も積極的に働いた。 ジュネーブでは石油アナリストのブライアン・ウッドマンが、スペイン滞在中のハマド王主催のパーティーに招待されるが息子の誕生日と重なるので渋っていたが、同僚の勧めもあって息子同伴でスペイン入りした。そこでは病気がちの王の後継を狙うナシール王子、次男のメシャール王子も滞在中だった。別荘では石油の利権に群がるアメリカ企業の関係者も顔をだし、アメリカと距離を置いている長男ではなく次男のメシャール王子擁立を密かに画策する。そのパーティー会場で不幸な出来事が起きるが、それは一体...。 さて、ここから先はポイントを述べる。パーティー会場で起こった不幸な出来事とは?その出来事と石油ビジネスの関係は?米国企業が画策する次男王子擁立は成功するか?王子擁立の秘策とは?テヘランでミサイル引渡しに失敗したハーンズにCIAから新たに下った指令とは?行方不明のミサイルの行方とその行き先は?キリーン社とコネックス社の合併劇は成功するか?合併劇の裏で暗躍する人物とは?などを中心に今後発売されるDVDでご覧下さい。 【鑑賞後の感想】 日本人には馴染みの薄い石油ビジネスに関するテーマであり、と同時に中東の王室と米国の石油会社とCIAの裏での暗躍も絡んでくる。こうなると世界情勢を理解しないでこの映画を観ても、この脚本の真意を理解するのは困難になってくる。更に、冒頭でコネックス社に勤めていた出稼ぎ親子の悲劇がラストでとんでもない事態となって繋がってくる。複数のストーリーの糸がどこかで繋がるのか、それを見極めながら真剣に観ないとこの映画は理解出来ないそういう作品だった。 通り一遍の中東情勢なら私も理解しているが、こうしてCIAと石油会社が利権を巡って王室の後継者問題にまで口を挟むとなると、これは単なる「石油ビジネス」の話ではない「陰謀」「謀略」「利権」「ビジネス」「暗殺」「宗教」「死生観」「外国語」「内部分裂」など多くのキーワードから成り立っている。 ジョージ・クルーニーの2枚目としての役目はここではなく、CIA工作員として外国語に堪能で髭を生やした風貌は、従来の彼のイメージから一歩脱却するのに成功した作品となった。今後の彼の出演作品が楽しみになった。 【自己採点】(10点満点) 8.8点。硬派なストーリーとG・クルーニーやM・ディモンの演技にも注目したい。これから発売されるであろうDVDで鑑賞される方には、中東情勢を今のうちに勉強して下さい。 人気blogランキングへ 満開の桜の写真はこちらでご覧下さい [今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1.Randy Goodrum/Fool's Paradise 2.Donny Hathaway/These Songs For You,Live!

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