2007/09/23(日)22:10
映画『マリー・アントワネット』を観て
9.マリー・アントワネット
■原題:Marie Antoinette
■製作年・国:2006年、アメリカ・フランス・日本
■上映時間:123分
■鑑賞日:1月28日 スカラ座(吉祥寺)
■公式HP:ここをクリックして下さい
□監督・製作・脚本:ソフィア・コッポラ
□製作:ロス・カッツ
キャスト
◆キルスティン・ダンスト(マリー・アントワネット)オーストリアから嫁ぎ波乱万丈の人生を送る
◆ジェイソン・シュワルツマン(ルイ16世)マリーの夫で祖父ルイ15世死去に伴ない即位
◆マリアンヌ・フェイスフル(マリア・テレジア)マリーの母でオーストリア女帝
◆リップ・トーン(ルイ15世)ルイ16世の祖父でマリーが嫁いだ時のフランス国王
◆アーシア・アルジェント(デュ・バリー夫人)ルイ15世の愛人で元娼婦
◆スティーヴ・クーガン(メルシー伯爵)オーストリア大使で宮廷でのマリーの相談役
◆ジェイミー・ドーナン(フェルゼン伯爵)マリーが心を寄せていたスウェーデンの伯爵
◆ローズ・バーン(ポリニャック公爵夫人)マリーの遊び相手
◆ジュディ・デイヴィス(ノアイユ伯爵夫人)マリーのフランスでの教育係
【この映画について】
歴史上名を残した女性は数多いが、その中でもルイ16世のお后としてハプスブルク家からフランスへと嫁いだマリー・アントワネットは贅沢三昧をした女性として現代では知られている。
この映画ではマリーがフランスへ嫁入りしたから宮殿を脱出するまでを、現代風青春映画として描いている。主演は、『スパイダーマン』『モナリザ・スマイル』『エリザベスタウン』等の注目作への出演が続くキルスティン・ダンスト。全編を彩るお菓子やドレスの豪華さにもうっとり。音楽もクラシックではなくロックが中心。ヴェルサイユ宮殿を撮影に使うなど美しい映像にも注目してみてもらいたい。
アカデミー賞では最優秀衣装デザイン賞にノミネートされているがその点は納得。
【ストーリー(ネタバレなし)】
オーストリア皇女アントワーヌは14歳のとき、母マリア・テレジアの命令で、フランス王太子(後のルイ16世)のもとへ両国の同盟強化を目的に嫁ぐことになった。
新しい出会いに期待で胸をふくらませてお迎えの馬車に乗り込むが、哀しい別れの儀式が訪れる。国境でフランス側に引き渡される際、待ち受けていたお世話係のノアイユ伯爵夫人に服や持ち物だけでなく愛犬までも取り上げられてしまい、思わず涙をこぼすアントワーヌ。しかし、意を決し、頭の先から爪の先まですっかりフランスの服に着替え、未来の王妃マリー・アントワネットとしてフランスの土を踏む。
ヴェルサイユ宮殿に到着したマリーは、国王ルイ15世の歓迎を受け、彼の孫で夫となるルイ・オーギュストと始めて対面した。
弟たちとフェンシングごっこに興じる15歳のルイは、14歳のマリーよりももっと幼い子供のような少年で思わず「子供っぽい」と呟いてしまう。1770年5月16日、2人は宮殿の聖堂で華やかな結婚式をあげた。
マリーにとって、ヴェルサイユでの生活は奇妙なものだった。神父や国王がベッドに集まり、大勢に監視されるように迎えた結婚初夜。
翌朝、着替えの時は、その部屋でいちばん位の高い人が服を持ってきてくれるまで、裸でずっと待っていなければならなかった。母よりウィーンでの生活とフランスでの宮廷の生活は大きく違うと事前に知らされていたが、余りにもしきたりや順序を重んじる宮殿での生活に戸惑いを隠せなかった。
王族や貴族たちの口から聞こえてくるのは陰口ばかり。国王ルイ15世は、愛人のデュ・バリー夫人と人前で平気でいちゃつき、宮廷の品位と秩序を乱していた。
マリーは、元娼婦で品のないデュ・バリー夫人が大嫌いだったが、反面、彼女がうらやましかった。デュ・バリー夫人は明らかに国王に愛されていたからだ。それに引き替え、内気なルイはマリーとの営みに関心を示さず、同じベッドに寝ていても指1本触れようとしない。オーストリアの母からも、オーストリア大使のメルシー伯爵も、「この結婚は同盟だから、一刻も早く世継ぎを」とせかされる日々の中、マリーがいくら努力しても、ルイは彼女を抱こうとしない。業を煮やした母からは神聖ローマ皇帝でもある兄がフランスまで来て、マリーに再度同盟と世継ぎ誕生の重大性を訴え夫のルイ16世にも後継者誕生を急かした。
後継者誕生への重圧から逃れるかのようにマリーは、靴やドレスや宝石、お菓子やシャンパンへや高価なドレスへの浪費に楽しみを見出し、ギャンブルやパーティにはまっていった。そしてマリーの浪費癖は度を超えはじめ、徐々に国家財政にまで影響を与えるようになっていった。パーティーではスウェーデン陸軍のフェルゼン伯爵と出会いこころをときめかす。
結婚から4年後の1774年5月10日、ルイ15世が天然痘を患い急逝しルイはルイ16世として即位しマリーは王妃となる。マリー18歳、ルイ16世19歳であった。
さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。
1.マリーに待望の娘が誕生した。その時、夫のルイが彼女に贈ったものとは?
2.マリーが娘のマリー・テレーズを育てる上で大切にしていてこととは?
3.アメリカ派兵への金銭的援助を迫る側近に対するルイの決断は?
4.牢獄を襲撃した民衆が王室へ不満を向けに来るとの読みから国外脱出を進言する側近に対し、ルイ16世とマリーはいかに対処したか?
5.疲弊する国家財政と、食料不足から不満を持つ民衆が宮殿へ押し寄せる。その時、マリーが怒り狂う民衆の前で見せた態度とは?
などを中心に映画館でご覧下さい。
【鑑賞後の感想】
マリー・アントワネットと言えば、贅沢三昧で国家財政を傾け民衆の怒りを買って断頭台で処刑された、これが一般的に定着しているイメージであろう。
この映画ではソフィア・コッポラ監督の意向で、湿っぽい脚本は自ら廃しマリーの宮殿内での生き様を現代風に描いた。が、確かに彼女の浪費癖と派手な生活と世継ぎ誕生に悩む姿を全面に出したが、もう少し歴史的事実と庶民との生活の差なども含めて描いて欲しかった。
民衆がパンを食べるにも困っていてそうした不満が革命へと繋がったのだから、民衆の生活を描く事で宮殿内の異常さも引き立つと思う。
ソフィア監督は前作の「ロスト・イン・トランスレーション」では見事な脚本を書いてアカデミー賞まで授賞したが、今回はそうした片鱗がみられず残念であった。
配役面でもマリー・アントワネットをキルスティン・ダンストに演じさせたのもミスキャストであろうし、ルイ16世を親戚でもあるジェイソン・シュワルツマンに演じさせたが彼自身に魅力がないのでこの配役もピンと来なかった。
そうしたマイナス点を補ったのが映像の美しさだ。不可能と思えたヴェルサイユ宮殿でのロケでこの映画の映像にリアリティを与えるのに成功した。映像は殆どがロケ映像であり豪華な宮殿やその周辺の自然の素晴らしさ、加えて衣装やスィーツ類や食事の凄さなどには目を奪われた。
【自己採点】(100点満点)
65点。ストーリーだけを評せば点数はこれ以下だが、映像の美しさを考慮してこの点数を付けた。
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