KINTYRE’S DIARY~旧館

2011/02/01(火)23:41

映画『リダクテッド真実の価値』を観て

88.リダクテッド真実の価値 ■原題:Redacted ■製作年・国:2007年、アメリカ・カナダ ■上映時間:90分 ■字幕:寺尾次郎 ■鑑賞日:11月3日、シアターN(渋谷) スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ □撮影監督:ジョナサン・クリフ □編集:ビル・パンコウ ◆パトリック・キャロル(リノ・フレーク) ◆ロブ・デヴァニー(マッコイ) ◆イジー・ディアス(エンジェル・サラサール) ◆タイ・ジョーンズ(スイート上級曹長) ◆ケル・オニール(ゲイブ・ブリックス) ◆ダニエル・スチュワート・シャーマン(B.B.ラッシュ) 【この映画について】 「カジュアリティーズ」「ブラック・ダリア」のブライアン・デ・パルマ監督が、イラク戦争で実際に起こった事件を基に、戦場の真実の姿を暴き出す衝撃の問題作。 タイトルの“リダクテッド”とは、残酷なシーンや不都合な情報を削除した“編集済み”の映像という意味でアメリカのメディアで使われる言葉。 9.11を受けて始まったアメリカの対テロ戦争では、アメリカの大手メディアによる戦争報道がかつてないほど管理されたものとなったと言われ、そのことに危惧を覚えたデ・パルマ監督が、そうしたマスメディアによって削除、あるいは無視された映像にこそ真実があるとの主張の下、実際に多数存在する兵士たちが戦場を直に撮影したプライベート・ビデオやアラブやヨーロッパのニュース映像、あるいは従軍記者の取材映像素材といった様々なフォーマットの映像をリアルに再現して、戦場での出来事を生々しく迫真のドキュメンタリー・タッチで綴ってゆく。 (この項、allcinemaより転載しました) 【ストーリー&感想】 2006年4月、イラクのサマラ。米軍が設置した検問所を守る兵士がいた。戦場の映像をカメラに収めて映画学校に入学しようと目論むサラサール、故郷に妻を残して従軍した弁護士のマッコイ、“ファックと戦闘”に目がない貧しい南部出身のフレークとラッシュら、いずれも若い兵士達。 自爆テロや狙撃の格好の標的になる検問所の兵士達は、暑さの中、重装備を身につけ、緊張感と退屈に耐えながら任務を遂行していた。 ある時、1台の車が減速の指示を無視して猛スピードで走ってくる。必死に止めようとする兵士達。だがその時、停止線を越えた車が自爆テロを仕掛けてくると見做したフレークの銃が火を噴いた。 しかし、乗っていたのは産院へと急ぐ妊婦とその兄だった。フレークはサラサールに向かって平然と答える。“任務を遂行しただけさ。人を殺したらビビると思ってた。でも、魚を殺した程度だ。” 6月末。いつ終わるとも知れない任務が続く。死と隣り合わせの検問所の横では、地元の少年達がサッカーに興じる日常風景が繰り広げられていた。だが、そこでスイート曹長が捨てられていたボールに仕掛けられた爆弾で命を落とす。それを目の当たりにしたフレークは、恐怖と怒りから過激さを増してゆく。 ある夜、彼らは“戦争遂行に役立つ証拠捜索”の任務で民家に踏み込み、一人の男を逮捕する。男の娘達は検問所を通って通学していたが、下心のあるラッシュはその姉に目をつけていた。 7月。フレークは酒に酔った勢いで“娘の家に押し入ろう”と言い出す。サラサールは撮影を希望して同行を決める一方で、伍長のマッコイは彼らを静止する事ができない。勢いに引きずられるように、部隊は“大量破壊兵器を探すんだ”とわめくフレークとラッシュを先頭に、少女の家に向かって行く……。 人間不審の最前線でもある戦場、砂漠気候の猛暑の中でいつ終わると知れない任務。そこに派遣されている若手兵士たちには、それぞれがここに来る理由を持っている。 検問所の警備と言う最前線での任務は、人間を徐々に狂気へと駆り立ててゆく。曹長がサッカーボールに仕掛けられた爆弾で爆死してからは、次は自分では?との不安が増していく。 そして、フレークが日頃から目を付けていた地元の少女の家を急襲し、兵士たちはそこでいままで溜まっていた不安を爆発させる。 戦場では人間が正気を保つのは困難であり、普段の生活では考えられないことが起きる。従って、前線の兵士を狂気に駆り立てている戦争についてもっと考えるべきである。 特に、今回のイラク戦争は大義なき戦争であり、米国の一方的な都合と理屈で仕掛けられた点が世界に知れ渡ってしまった。 デ・パルマ監督のこの作品は、ドキュメンタリータッチのスタイルであるが、タイトルは「編集済み」を意味する。最前線での出来事は、実際に映像として本国に届き放送される段階では、アメリカに取って都合の良い場面を「編集」してお茶の間に届ける。そこには、国民感情を刺激するような「都合の悪い映像」は放送されない。 デ・パルマ監督は、この作品でマスコミの取材姿勢や倫理観などに対して疑問を投げかけており、一般国民に対しても映像を鵜呑みにしては行けないことを警告しているようだ。

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