KINTYRE’S DIARY~旧館

2011/03/20(日)21:46

映画『誰も守ってくれない~Nobody To Watch Over Me』を観て

映画・邦画(57)

9-6.誰も守ってくれない~Nobody To Watch Over Me ■製作:東宝 ■製作年・国:2009年、日本 ■上映時間:118分 ■鑑賞日:1月24日、シネフロント(渋谷) スタッフ・キャスト(役名) □監督・脚本:君塚良一 □脚本:鈴木智 □美術:山口修 □撮影:栢野直樹 □録音:柿澤潔 ◆佐藤浩市(勝浦卓美) ◆志田未来(船村沙織) ◆松田龍平(三島省吾) ◆石田ゆり子(本庄久美子) ◆佐野史郎(坂本一郎) ◆佐々木蔵之介(梅本幸治) ◆木村佳乃(尾上令子) ◆柳葉敏郎(本庄圭介) 【この映画について】 犯罪者の家族を保護するという一般には知られていない警察の役割に注目した「踊る大捜査線」シリーズの脚本家・君塚良一が、10年越しの企画を完成させたシビアな社会派ドラマである。 手持ちカメラとロケ撮影をメインにしたセミ・ドキュメンタリー撮影によって、少年犯罪、家族の崩壊、表層しか追わないマスコミ、歯止めのかからないネットの暴走など現代社会の残酷ですさんだ部分がリアルに描かれる。 逃避行を強いられた志田未来演じる少女の不信に満ちた真っ直ぐなまなざしを受け止める刑事役の佐藤浩市と松田龍平の抑制の利いた演技と独特の存在感が素晴らしい。第32回モントリオール世界映画祭最優秀脚本賞受賞作品。 【この映画について】 親子4人で暮らしていた船村家の幸福は、未成年者の長男が小学生姉妹殺人事件の容疑者として逮捕されたことで無惨にも崩れていく。 衝撃を受ける両親と沙織に群がるマスコミと野次馬たち。一家の保護のため、東豊島署の刑事である勝浦と三島は船村家に向かう。容疑者保護マニュアルに沿って船山夫婦は離婚、改めて妻の籍に夫が入ることで苗字が変わる。中学生の沙織も就学義務免除の手続きを取らされて、同い年の娘を持つ勝浦が保護することになる。 皮肉にも勝浦の家庭も崩壊寸前の状況で、その修復のために娘の美奈が提案した家族旅行の予定もこの事件によって反故になろうとしていた。 マスコミの目を避けるため逃避行を続ける勝浦と沙織だが、どこへ逃げても居所をつきとめられる。インターネットの匿名掲示板では、船村家に関する個人情報が容赦なく晒されていった。心労のため、家宅捜索が行われている最中の自宅のトイレで首をつって自殺してしまう母。それを知った沙織は、ますます錯乱する。 勝浦がたどりついたのは、西伊豆の海辺のペンションだった。主人である本庄圭介と妻の久美子のひとり息子は、3年前に勝浦が担当する事件で殺害された。勝浦の失態は、自身と本庄夫婦の心に大きな傷を残していた。ネットではそんな勝浦の過去の失態さえ暴露され、大手新聞社記者の梅本は執拗に勝浦の行動を追う。 秘密裡に移動しているつもりだった2人だが、その行動はネットに依存する野次馬たちの悪意に追跡されていた。勝浦は沙織を匿う真相を知った圭介からいったん激しく拒絶させるが、語り合うことで彼の本心に触れる。 一方、いたたまれなくなった沙織は、訪ねてきた恋人の達郎と束の間の楽しい時間を過ごす。達郎が訪ねてきた翌朝、沙織はペンションから達郎と一緒に逃亡する。   達郎の裏切りに合う。そして、ネット依存者たちの罠に嵌められるが、勝浦によって救出された。翌朝、駆けつけた三島たちによって、ようやく勝浦は解放された。沙織も最後には心を開いてくれた。ペンションを去りながら、娘の美奈に電話をかける勝浦だった。 この映画で強調されているのは、警察が少年事件の加害者の家族をマスコミの取材攻勢から徹底して守るということ。 一家の長男が未成年者で殺人犯となった直後から、行政側のテキパキと隙の無い手順を踏んだ流れるような離婚手続きや就学免除手続きのスムーズさにまずは驚かされる。そうこうしていると警察が家宅捜索に来て、その隙間を縫って母親が自殺する。オープニング直後のまったりとたイメージ映像から、一転してストーリーはテンポ良くドンドン進む。 この過程で勝浦と令子の微妙な関係が示されるのだが、沙織を匿う役で終わってしまうのは勿体ない。ここからはネット掲示板に個人情報がこれでもかと曝され、梅本は悪意を感じさせる取材態度で「感じが悪い」との印象を植え付ける。 梅本の過去を暴く取材と、沙織を匿っても直ぐに居場所が付きとめられてしまうネット社会への警鐘がそこからの一つのテーマへと発展する。そうしたネットでの罵詈雑言から勝浦は自らの家族と沙織を「守って上げることが出来ない」ことに苦悩する。 勝浦が3年前に捜査の過程で失態を演じた家族が経営する西伊豆のペンションへと逃避するのは、繋がりとしては出来過ぎ。西伊豆へと逃げても居場所は突き止められ、遂には恋人の達郎にも沙織は裏切られ人間不信はピークに達する。 沙織を演じた志田未来の役は、急な出来事で動揺を隠せない中学生との設定で、大人の思惑に振り回され口数が少ない役どころなので、如何にして態度や表情で演じるかがポイントなのだが見事に場面場面で演じ分けていた。 決して特別可愛いとも美少女でも無いのだけど、今後、大人の女優へと成長していくのが楽しみだ。 ストーリー的には特筆すべき点は見当たらない。冒頭で長男が殺人犯となってしまうのだが、それそのものより、そこから発生する加害者側の家庭崩壊とマスコミやネット社会の恐ろしさをことさら強調しているので、何となく展開が読めてしまう。この内容でモントリオール映画祭で最優秀脚本賞を受賞しているのだが、そこまで脚本が優秀とは感じなかった。 ラストシーンの浜辺で沙織に対して勝浦が、「お前が家族を守らないとダメだ」と諭し、その後、徒歩で帰る勝浦の姿を見て沙織が車を降りて礼を述べるシーンは印象的だった。志田未来が佐藤浩市と並ぶ演技力を発揮していたシーンだった。

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