KINTYRE’S DIARY~旧館

2010/11/21(日)14:05

AORの名盤、スティーヴ・キプナーの「ノック・ザ・ウォール・ダウン」(1979)

音楽・AOR(41)

スティーヴ・キプナー「ノック・ザ・ウォール・ダウン」(1979) <曲目> 1. THE BEGINNING/ザ・ビギニング 2. KNOCK THE WALLS DOWN/ノック・ザ・ウォールズ・ダウン 3. LOVEMAKER/ラヴメイカー 4. SCHOOL OF BROKEN HEARTS/失恋教室 5. WAR GAMES/ウォー・ゲーム 6. I’VE GOT TO STOP THIS HURTING YOU/ディス・ハーティング・ユー 7. LOVE IS IT'S OWN REWARD/愛の報酬 8. CRYIN’S OUT FOR LOVE/クライン・アウト・フォー・ラヴ 9. GUILTY/ギルティ 10. The Ending/エンディング 11. I Had To Find It Out For Myself 12. Love Is It's Own Reward (Instrumental)/愛の報酬(インストルメンタル Musicians: Drums:Jeff Porcaro,Mike Lingle Percussion:Victor Feldman Bass:David Hungate,Kenny Lee Lewis Guitar:Dean Parks,Steve Lukather,Jay Graydon,Larry Carlton,Tom Seufert,Steve Kipner Keyboards:Michael Omartian,Greg Mathieson,Steve Porcaro,David Foster,Geofrrey Leib,Robbie Robinson Trombone:Bill Reichenbach Trumpets:Jerry Hey,Gary Grant Sax:Don Roberts Background Vocal:Steve Kipner,Peter Beckett,Bill Champlin,Tom Seufert,Bobby Kimball,Tom Kelly,Carmen Twillie 最近になって一気にAORのリイシュー化が進み音楽専門月刊誌にまでレビューが書かれるなど、ちょっと前までは考えられない状態に嬉しい意味での戸惑いを感じています。 AORには1作しか発表しなくても「AORの名盤」とファンの間から称されるアルバムは少なくありませんが、スティーヴ・キプナーの「ノック・ザ・ウォール・ダウン」もその仲間の一つです。この度のリイシュー(再発盤)ではボーナス・トラック2曲を含む「+2」としてメデタク陽の目を見ることになりました。 このアルバムはエアプレイでデヴィッド・フォスターとコンビを組んだ、名ギタリストでもある、ジェイ・グレイドンがプロデュースとギターで参加しています。 1曲目はアルバムの冒頭を飾るに相応しいロック調のナンバーで、終始、ジェイ・グレイドンのギターが印象的だが、エンディングはいきなり訪れ、「もう少し聴きたい」との余韻を残して2曲目に移る。 その表題曲である2曲目ではラリー・カールトンがアコギで加わり、デヴィッド・ハンゲイト(TOTO)のベースも良い味を出している。プレイヤーのピーター・ベケットらとのバック・ヴォーカルとの絡みも良い。 3曲目はソングライターとしてのキプナーの本領発揮と言えそうな曲。中間部でのジェイ・グレイドンのソロは短めで、曲の良さで勝負している。キーボードでデヴィッド・フォスターが参加している。 4曲目は力強いキプナーのヴォーカルと、ビル・チャンプリンやボビー・キンボール(TOTO)らのバック・ヴォーカルの終盤での絡みが印象的。この辺のアイデアはジェイ・グレイドンによるものだと察する。 5曲目はジェフ・ポーカロ、デヴィッド・ハンゲイト、スティーヴ・ルカサー、ボビー・キンボールらのTOTOのメンバーらが勢揃いしている。ここでも前曲同様にバック・ヴォーカルのコーラス隊が耳に残る。 6曲目は、このアルバムの中でもこれだけがバックの演奏陣が異なる。その訳は不明だが共作者であるトム・シューファートがギターとバック・ヴォーカルで参加していて、この曲にはジェイ・グレイドンが参加していない。アルバムの中でも異色の曲で、全体的にシンセの音が大きいのが特徴。 7曲目はキプナー自身の多重録音によるコーラスから始まる。冒頭からエアプレイの様な雰囲気が漂うが、ここでもデヴィッド・フォスターが参加しているので至極当然?メディアム・テンポの曲で、前曲から再びキプナーらしさが戻ってくる。 8曲目はイントロと中間部でドン・ロバーツのサックスが入る。ポップな曲調にこのサックスが良い味を醸し出している。 9曲目は冒頭にしっとりとした展開になるように見せながらも、曲は一転して軽快なリズムで展開して行く。ジェイ・グレイドンのギターがグイグイと引っ張り、最後に再び冒頭の様な展開になり幕となる。しっとりとした部分は別れた恋人への反省とか後悔を述べているようだ。 10曲目はアルバム本来のラスト。1曲目の「The Beginning」で始まりラストは文字通り「The Ending」で終わる。どちらもキプナーとジェイ・グレイドンの共作で、グレイドンのギター・ソロがこれでもかと言うほど炸裂して終わる。 11曲目と12曲目は今回のリイシューに際してボーナス・トラックとして加わった。11曲目は冒頭からジェイ・グレイドンのギターが炸裂するミディアム・テンポの曲で、表題曲とのカップリングでシングル発売された際にB面(LP時代ですので)として収録されていた。 12曲目は7曲目のインスト版でこれもシングルB面で発売されていた。ジェイ・グレイドンのギターが延々と続きますので、彼のファンなら涙ものかな? こうしてアルバム一枚を聴いてみると、やはり、シンガーソングライターとしての曲の良さと、ジェイ・グレイドンのプロデューサーとしての確かな仕事ぶりには感服します。 演奏陣も6曲目以外はTOTOのメンバーであるジェフ・ポーカロ、デヴィッド・ハンゲイト、スティーヴ・ルカサー、ボビー・キンボールらに加えて、ラリー・カールトンやジェイのパートナーであるデヴィッド・フォスターらが参加していてキプナーのヴォーカルを見事に引き立てている。 プロデューサー特権?でジェイ・グレイドンがギターで目立ち過ぎとも思えますが、この辺は愛嬌として受け流しましょう。ジェイ・グレイドンは、この頃からギタリストとしてより、プロデューサーとして自信を付けたようで、そのきっかけとなったのがマーク・ジョーダンの「ブルー・デザート」と本盤であることは間違いないでしょう。 スティーヴ・キプナーはコンポーザーとしてオリビア・ニュートン・ジョン「フィジカル」を筆頭にシカゴ、ジャック・ワグナー、ジョージ・ベンソン、マーク・ジョーダン、エアプレイ、近年ではクリスティーナ・アギレラ等と枚挙に暇がないほど多くの楽曲をアーティストに提供してきた。 AORアーティストと言えば一発屋で、その後のキャリアも細々と続くだけのパターンが多い中で、彼は今でも現役の第一線で活動しています。 このアルバムは、AORが華やかだった時代の最中に発売された一枚として、AOR史に残る一枚だと思います。これからも私の愛聴盤として残って行くことだと思います。 ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)

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