去るも地獄、残るも地獄のサラリーマン
今日、昼食をとろうと当地のあるラーメン店に車を止めました。ふと見るとその駐車場に見慣れたペインティングの営業用車が止まっています。そう、私が行政書士になる前の会社の車でした。あれ、誰か店の中にいるなと思いのれんをくぐりました。 カウンター席に見慣れた横顔が座ってラーメンをすすっています。「よう、元気か」私の声に振り向いた彼も「おお、お久しぶりです。お元気そうですね。」と返してくれた。彼は私より一回り若く、人懐っこい性格がゆえに在職中私からよく何につけからかわれていました。私がいた頃は総務担当として人事、服務の仕事をしており、今は営業部に配属となり当地のお得意様店舗を回っているそうです。◆「売上げはどうだい」◇「はかばかしくありません」◆「そのうち持ち直すだろう」◇「いや、以前に戻ることすら厳しいでしょうね」営業の現場に携わる者の偽らざる市場の状況でしょう。 彼は今は廃止になった会社の硬式野球部の応援リーダーとして、大きな団旗を試合中ささげ持っていることができた立派な体格の持ち主である。その彼が体を小さくして売れ行きが悪いという言葉から、彼自身の心境を感じとることができた。営業員であるが故に成績の悪化は自分自身に降りかかってくる。しかし市場は会社からいくらケツを叩かれても好転をしない。やりきれない気分であることがその後の会話の端々に現れてくる。 「先輩はいいときに会社の見切りを決断されましたね。」私と違い、若いが故に会社にしがみつかざるを得なかった彼の苦悩が私の心にも響いてくる。でも気を取り直してまた営業活動に向かっていった。ラーメン店を出て駐車場の営業車に向かうその後ろ姿は以前のとおり大きな背中に戻っていた。 サラリーマンは会社の業績が悪化して人員整理を受けたその結果、去るも地獄、残るも地獄という言葉をよくつかうもの。私は去って自営業として出発した、彼は残って自分の業績を上げようと努力している。2人が共に持つものは、残された自分の「未来」という「宝物」を信じて目指そうという向上心。私自身も頑張らねばならないが、彼の将来の成功を祈って営業車が駐車場を出て行くのを目で見送った。・・・しかし店は冷房が効いているとはいえ、熱い味噌ラーメンで大汗かいてしまった。ワイシャツの襟がびしゃびしゃ。雨でも降ったの?と言われそうだった。