カテゴリ:B~C級グルメ
◇ 4月17日(月曜日)晴れ;旧弥生二十日 丙子、春の土用
昔は日常的に身の回りにあったのに、今はもう殆ど見かけなくなったものが幾つかある。水屋や蚊帳、卓袱台などがそうだが、鰹節削り器もその仲間だ。 昔は鰹節を削らせてもらえるようになると、ちょっと大人に近づいたような気持ちがしたものだ。厚手の木で組み立てられた鰹節削り器の端を叩いて、鰹節が薄板状にくるくる出てくるように刃の出方を調整するのには、ちょっとしたコツがあって、妹が面白がって近づいてきても決してやらせることはなかった。 それが、最近ではとんと見ない。恐らくはどの家でも一個はあるけれど、使われずにどこかにしまわれているのであろう。我が家でもそうである。 昔流の鰹節削り器は刃が欠けやすく、どうかするとすぐに削れなくなってしまいがちである。それに削っている最中に刃が欠けるということは、欠けた刃が何処に行ってしまったのか心配になる。削った鰹節に混じってしまったかと思えば不安になる。それに、段々鰹節が小さくなっていくと、手まで一緒に削ってしまいそうで心配だ。僕は、鰹節は自ら削って使うものだと思っているが、このような理由でいつのまにか削り器を使わなくなってしまった。 ところが、知人の紹介で、ハンドルを回すだけで鰹節が削れる鰹節削り器があると聞いて俄然欲しくなり、とうとうこれを買ってしまった。「株式会社枕崎市かつお公社」という鹿児島県のメーカーが作っていて「おかか7号」という名前で売られている。(URL: http://www.rakuten.co.jp/katuo/) メカニズムとしては何らけれんみがあるものではない。昔のカキ氷を作る機械と機構は殆ど変わらない。水平の丸板に120度毎に刃がつけられてあって、この板の上に鰹節をあてがい、板の中央につけられたハンドルを回すと、削れた細片が下の容器に溜まるのである。 単純な機構である。鰹を動かさず、ハンドルを以って刃を回転させることで鰹節を削るようにした。細かくギザギザに刃をつけたストッパーで鰹節を固定するから、小さくなっても手まで削ってしまう心配はない刃は一枚の大幅な鋼をでこぼこに切り抜いて、幅5ミリ程度の何枚もの小さな刃で鰹節を削るようにしてある。幅の広い刃だと、削るには大きな力が必要になるし、刃も欠けやすくなる。恐らくは「おかか1号」から7号に至るまでには、こういった様々な細かい工夫が凝らされてきたのであろう。 削ってみると、最初は粉が出てくる。粉が出るのは、刃が鰹節にしっくりと噛みあうまでの間だからしょうがない。その内すぐに細く長い桃色の薄片状に削れるようになる。そうなると面白いものだから、どんどんハンドルを回す。出来上がるのはやや幅広だが所謂「糸削り」である。僕は幅広に削ったのも大好きなのだが、これは機構上の制限だからしょうがない。 ハンドルを回しながら削っていくと、プラスチックの受け皿が削り片で一杯になるのは、瞬く間である。削りたての鰹は本当にいい香りがする。このところ週末ごとに、鰹節を削って、豆腐や焼き茄子、おひたしなどに使っている。特に今の季節は、熱々のご飯の中央に釜揚げのしらすを盛り、その周囲を鰹節で覆って、生醤油をかけ巡らして食べると、本当に美味しい。 ところで、世の中には、「鰹削りぶし」と「鰹節削りぶし」というのが有って、それぞれ厳然とした違いが有る事をご存知であろうか? 生の鰹から、鰹節が出来上がるまでには無慮20工程ほどの手間がかけられる。 基本的には、煮る→乾かす→かび付けというサイクルだが。各工程が更に細かい工程に分けられているから、最終的に鰹節が出来上がるまでには、随分の手間がかけられているのだ。 鰹を煮た後、骨を抜き去って乾燥させ、水分が25%程度までになったものを「荒節」という。この荒節を削ったものが「鰹削りぶし」なのだ。 荒節は、更にカビを付けられて、鰹節になっていく。カビも、付けては乾かし、その後カビを取り去ったあとに再びカビ付けしと、この工程が三回から、最大六回まで繰り返される。三回までカビ付けしたものを「枯れ節」、四回以上カビ付けしたものを「本枯れ節」という。この枯れ節を削ったものを、「鰹節削りぶし」と呼ぶのである。 名古屋名物きしめんに山ほどかけられて、身をねじってもだえているのは荒節を削った「鰹削りぶし」である。「鰹削りぶし」は、「花かつお」として袋詰して売られている。こういう辺りは意外と知らない事なので、覚えておくと結構知ったかぶりが出来るものだ。 それにしても、春野菜の出回る頃、ちょっと工夫をして削りたての鰹節をふんだんにかけて美味しくいただけるのは、おかか7号のおかげ様々である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006.04.18 16:46:32
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