昭和レトロな電気扇 芝浦電気製
こんにちは、資料館です。資料館では、新年度を迎えて展示品の入替をしました。その中からいくつか紹介していきます。初回は、上の写真に写る電気扇風機です。筐体には鉄が使われ、羽根は真鍮でできています。重量は約8kgと、現在のプラスチックを多用したものと違い、重厚感がありありです。台座の向かって右側に銘板がありました。------------------------------------------------------12 Inch A.C. Electric FanCat Volts Cycles Patent No. Utility Model No. C-7032 100/110 50/60 30005 33754 42413 58168Shibaura Engineering Works, Ltd., Tokyo, Japan------------------------------------------------------製品名は「12 Inch A.C. Electric Fan」。直訳すると「12インチ交流電気扇」。型番は「C-7032」。そして、製造は「Shibaura Engineering Works, Ltd.」。漢字表記では、「株式会社芝浦製作所」です。現在の東京芝浦電気株式会社(東芝)の前身です。製造年代を知りたくて、グーグル先生に聞いたところ、いくつか資料を紹介してくれました。しかし、どれもあいまいで、残念ながら特定することができませんでした。『江戸東京博物館紀要 第2号』(2012年3月)では、同型の扇風機について、芝浦電気が東京電機と合併して「東京芝浦電気株式会社となった1939年(昭和14)以降、戦後の一時期まで芝浦製作所のプレートのままこれらの製品が流通しているため、販売時期・流通時期の特定は難しい」とあり、製造年代を「昭和初期~中期」としていました。当然のことながら、写真資料として掲載されている広告の年代も「昭和初期~中期」でした。また、銘板(プレート)ですが、当館の所蔵品は英語表記ですが、画像検索すると、日本語表記のものもあり、さらに表記されている特許番号等の個数にも違いがあります。ネットの海の中から、昭和5年の試験証のラベルのついた電気扇を見つけました。当館所蔵の電気扇の銘板には、4つの番号がありますが、昭和5年製のものには「28521」と「36243」が追加され、6つあります。昭和5年製の銘板に追加されたこの2つの番号は、当館所蔵の電気扇のガードカバーに巻きつけれている金属プレートにありました。ということは、当館所有の電気扇は、台座の銘板に番号のある昭和5年製のものより以前に製造された可能性が高くなります。また、登録意匠の36243を独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供する検索サービスで検索すると次の回答が得られました。-----------------------------------------------意匠登録0036243意匠の名称 花辨型電氣扇保護枠指定物品 電気扇風機用保護枠登録年月日 昭和2年11月16日意匠権者氏名(名稱)株式會社芝浦製作所-----------------------------------------------以上のことから、当館所蔵の電気扇は昭和2年から昭和5年までの間に製造されたのだと思われます。さらに、モーター部の裏には鉛の封印とともに銅製のタグが括りつけられていました。昭和3年5月25日製の意味でしょうか?ところで、この電気扇、羽根が回転した時にガードの表と裏のラインが重なって睡蓮の葉のように見えることから、『睡蓮(すいれん)』と呼ばれていたそうですが、意匠登録では「花弁型」とあるだけで、「睡蓮」の文字はありません。前掲の『江戸博紀要』には、「戦後「水連」とよばれた、芝浦製作所の扇風機のうちもっとも一般に知られている製品」とし、その脚注には、東芝科学館の言として「1949年(昭和24)年以降、扇風機に植物のサブネームをつけるようになった」とあります。東芝製扇風機の戦後カタログを見ると、同型機を「水蓮」と称しています。ところが、戦前の広告には「水蓮」の文字はどこにも見あたりません。いつ頃から「すいれん」と呼ばれるようになったのか、また、東芝が漢字表記を「水蓮」と明示するまでのちまたでの非公式な漢字表記は「睡蓮」だったのか、残念ながら手がかりが無く、わかりませんでした。こちらは、ガードカバー中央にあるエンブレム。『SEW』の意匠は、Shibaura Engineering Works の頭文字を表しています。こちらについては、『生活学論叢 12号』(2007)所収の論文の中に、筆者の平野聖氏が「『アサヒグラフ』を通読したところ、1953年5月21日号の裏表紙にはSEWを付した広告が見られるが、翌1954年6月9日号裏表紙にはToshibaが使われていることが判明した」と書いているのを見つけました。※おまけ今年は、戦後80年。この電気扇が、昭和初期のものだとすると、「国家総動員法」(1938(昭和13)年)にもとづく不要不急の金属回収をよびかける政府声明や、1941(昭和16)年に公布された「金属類回収令」をすり抜けてきた歴史を持つ、貴重でタフな品ということになります。ご家庭でご不要になられたレトロな家電製品がありましたら、資料館までご連絡ください。モノと状態によってはいただきたいと思います。次回は、一番上の写真の奥に写り込んでいる「ハンドル付き電話機」の紹介を予定しています。