食の世界遺産「堂上蜂屋柿」を紹介します。
「堂上蜂屋柿」は、美濃加茂市蜂屋町が原産の「蜂屋柿」で作られる干柿で、「堂上」と冠せられるのは、天皇や歴代の将軍への献上品であったことから、「昇殿を許された『格』を持つ」との意味で、この干柿が「堂上蜂屋柿」と呼ばれるようになったのです。「蜂屋柿」の歴史は古く平安時代までさかのぼりますが、古文書によれば、1188年に源頼朝公に当地の干柿を献上したところ、「蜂の蜜のように甘い柿」との賞賛を受け、村と柿に「蜂屋」の名前を賜ったとのことです。以後、その干柿は、その名に違わぬ甘味として、信長・秀吉・家康や徳川家代々の将軍を虜にしつつ、高い評価を得ていったようです。また、それにまつわるエピソードとして、蜂屋村(現、美濃加茂市蜂屋町)にある名刹「瑞林寺」の住職が、豊臣秀吉に「蜂屋柿」を献上し、「蜂屋柿100個納めれば、年貢米5斗(約375kg)が免除される。」との取り決めをしたという話が残っています。また、関ヶ原の合戦前夜に、大垣城を攻めていた徳川家康の陣中に、同じく「瑞林寺」の住職が「蜂屋柿」を献上し、家康がおおぶりの「蜂屋柿」の干柿を見て、「これで、大垣(大柿)が手に入った!」といって、おおいに喜んだそうです。その後も、蜂屋村は徳川家の「御菓子処」として高い評価を得て、「堂上蜂屋柿」を献上することで、諸役御免の特権を得ていたとのことです。明治時代に入っても、時の明治政府が1900年のパリ万博に出品し、見事銀賞を受賞し、1904年のセントルイス万博では金牌を獲得し、世界がその価値を認めています。この素晴らしい「堂上蜂屋柿」も砂糖の普及に伴い、途絶えかけた時期もありますが、昭和5年に(故)村瀬俊雄さんが再び「堂上蜂屋柿」作りをはじめて復活し、昭和52年には「堂上蜂屋柿振興会」が発足して、美濃加茂市の特産品として注目を集めるようになりました。現在でも、蜂屋町に1000年伝わる伝統製法により、手仕事で加工されています。この取り組みが世界で認められ、2007年にはイタリアに本部のあるスローフード協会により「味の箱舟(食の世界遺産)」に認定されました。さらに、日本国内では2010年に(財)食品産業センターにより「本場の本物」にも認定されました。岐阜県ではこれらに先立ち、平成14年(2002年)に「飛騨・美濃伝統野菜」に認証し、広く消費者の皆様にPRしています。また、「飛騨美濃特産名人」の農産加工品部門で、平成3年度に村瀬琴子さんが、平成19年度に堀部庫市さんが認定されています。それでは、「堂上蜂屋柿」ができるまで、順を追って説明させていただきます。 9月の「蜂屋柿」です、特徴的な角張った果形がよくわかります。この時点で、果実は1枝1果に摘果されています。防除は「ぎふクリーン農業」の基準に沿った、必要最小限に留められています。生果1個の重さが350g前後の大玉のみ「堂上蜂屋柿」になれます。11月中旬になり、色づいた柿から順次収穫されます。 収穫された柿は、3~7日間ほどそのまま寝かして追熟されます。その後、手作業でひとつずつ丁寧に皮をむかれます。まず、ヘタを四角く整えます。 特色ある四角い形を生かすため、機械は使いません。皮むきがすんだら、1個1個丁寧に拭いて、渋を落とします。 T字型に切り落とした枝にひもをかけて、風通しの良い場所で2~3日陰干しします。 その後、天日干しします。干柿の柿色が青空に鮮やかに映えています。 柔らかくなりかけたところで、手もみ作業を行って果実が均一に乾燥するようにします。 仕上げの段階では、ニゴボウキ(稲穂の先で作った「ほうき」)で果実の表面を掃いて、粉を吹かせます。干柿の表面を刺激することで、小さな傷ができ、果実内部から糖分がしみ出して、粉を吹きます。 「飛騨美濃特産名人」も大満足の仕上がりです。このような手順で、収穫してから約40日で「堂上蜂屋柿」ができます。「堂上蜂屋柿」は干柿とはいえ、飴色の、半生菓子に似たとろりとした舌触りです。この品質を維持するため、販売は12月からの予約制としており、真空包装をして発送されます。また、品質を保証するため、各農家が出荷する干柿の全てを、製品審査会が品質検査をしています。販売はJAめぐみの蜂屋支店のみで行われ、毎年12月1日午前8時30分からの予約販売となっています。その後、12月16日頃から全国へ向けて発送されます。 ◆参考までに、昨シーズンの価格をお知らせします。木箱:6,000円~12,600円(6~8個入り、8~10個入り、10~12個入り)紙箱:3,200円~4,800円(6~8個入り)毎年、約5,000箱を出荷しており、数に限りがありますので、蜂屋支店の店頭にお並びいただくか、電話での予約ということになります。詳しいことは、〒505-0004 JAめぐみの蜂屋支店岐阜県美濃加茂市蜂屋町上蜂屋6-1 TEL 0574-25-2902におたずね下さい。 「柿寺」として有名な「瑞林寺」は、今も美濃加茂市蜂屋町にありますので、簡単に紹介します。 「蜂屋大仏」のある寺としても知られています。毎年1月第2日曜日には、「堂上蜂屋柿」と抹茶をたしなむ「柿茶会」が行われます。この寺には「堂上蜂屋柿」について記した古文書等も多数残されています。また、山門前にはこのように寺の由緒書きが飾られています。※「(財)食品産業センター」ホームページ(http://www.shokusan.or.jp/)※「本場の本物」ホームページ(http://www.shokusan.or.jp/honbamon/)※「スロー・フード・ジャパン」ホームページ(http://www.slowfoodjapan.net/)※「飛騨・美濃伝統野菜」ホームページ(http://www.pref.gifu.lg.jp/sangyo-koyo/nogyo/kakiyasaikaju/dentoyasai/)※「堂上蜂屋柿」ホームページ(http://www.hachiyagaki.jp/)※「飛騨美濃特産名人」ホームページ(http://www.pref.gifu.lg.jp/sangyo-koyo/nogyo/kakiyasaikaju/tokusan-meijin/)