キタの武生、ミナミの関!?
「刀匠見習い510」さんからのお便りです刃物のまち関市を語る上で外せないものといえば、「折れず、曲がらず、よく切れる」とほめたたえられた日本刀とそれを作った刀匠(関鍛冶)たちです。そんな刃物のまちの「原点」に触れることが出来るのが、市内中心部に近い南春日町に位置する関鍛冶伝承館です。ここでは鎌倉時代末~室町時代が起源と言われている関鍛冶の歴史や日本刀の製造工程、その構造・特徴が学べるほか、年に数回実際の日本刀の製造工程を間近で見られる古式日本刀鍛錬の一般公開も行われています。 ・・・とここまではありがちな紹介ですが、今回はここにある「変わりダネ」についてご紹介をさせて頂きたいと思います。それが関鍛冶伝承館を1階から2階へ上がる階段の下に鎮座ましますこれ!関伝鍛冶拵(せきでんかじこしらえ)「青宝丸(せいほうまる)」全長388cmもある大きな拵(こしらえ)です。とここで「拵とは何?」と疑問を持たれる方も多いと思いますので、その説明をさせて頂きます。日本刀は刃身本体のみでなく、刀の持ち手である柄(つか)、身に付ける際に刀身が収まっている鞘(さや)、刀を着物と結び付ける下緒(さげお)といくつかのパーツで1つの体を成しており、こういった刀を収めているパーツ全体を「拵」と言います。日本刀というとどうしても刀身本体に目が行きがちですが、それを一層引き立たたせるのが、豪華な装飾を凝らした拵の存在なのです。さてこの拵、通常の日本刀を収めているなら2mもいかないものなのですが、あえて拵に特化して大きくしてしまったものが、この青宝丸なのです。日本のみならず世界に名だたる刃物のまち関市が誇る巨大モニュメントです。大人2人は余裕でおさまる長さ!とここで同じ中部地区に強力なライバルが潜んでいることが発覚!それが「新天地にて活躍中!」でも取り上げられた、北陸一の刃物のまち福井県越前市の武生です。ここ武生は打刃物(原材料の丸棒を打ちのばして形作っていくもの)の包丁やハサミなどが主力ですが、その技術の粋を集めて作られたのがこれ!見る者を圧倒するこの存在感!この龍が鎮座ましますのが、JR北陸本線の武生駅1番線改札口すぐ傍で、岐阜方面から米原経由で金沢・富山方面へ向かうと、進行方向左手にどんと構えています。かつては武生市役所にあったものが、昭和の終わり頃に武生駅に引っ越して来たそうです。さてこの昇龍ですが、大きさは幅256cm×高さ180cmもあり、パーツとしては包丁から鉈(なた)まで、約2,960点もの刃物を使って組み上がっています。この越前打刃物、鎌倉時代に始まった越前刀鍛冶が起源とされ、やがて日本刀から日用刃物製品に特化して発展してきたと言われています。中部地区北側の武生と南側の関。場所も刃物製造の歴史も異なっている2つのまちですが、伝統に裏打ちされた技術は今なお多くの人を惹きつけています。モノづくりの思いが込められているモニュメントを巡ってみる旅も、これからの行楽シーズンいかがでしょうか?