ピーターソン・トリオでは影のうすかったジョー・パスとペデルセンだったが、まもなくリリースされた「デュークス・ビッグフォー」には真実陶酔してしまった。デューク・エリントンのピアノが堪能できたこととジョー・パスもいささか浪花節を思わせる泥臭いムードで演奏していて異色だ。ベースがペデルセンではなくピーターソンと長年連れ添ったレイ・ブラウンで、ルイ・ベルソンのドラム。ジョー・パスはご存知のように青春を麻薬との格闘に費やした人だからこの頃はいささか年を喰った新人だった。A面最後の「Prelude to a Kiss」などに彼のお得意のパッセージが堪能できる。しかし、このLPの本領はエリントンのピアノソロが前面に押し出たB面だと私は思っている。「Love You Madly」なんてまさにブルースのつぼを心得たクァルテットの名演だと思う。つづく「Just Squeeze Me」も「Everything But You」もエリントンの独壇場のように見えながらジョー・パスもレイ・ブラウンものびのび演奏している。これはエリントンとピーターソンの資質の違いによるものだろう。パブロ・レコードに参っていた頃の思い出である。