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カテゴリ:ムックきのこクラブ
ここでまた寄り道。 ムックきのこクラブの前身の日本キノコ協会を創始したとき、そのピンク色の観音開きのパンフレットで図解入りで1ページ割いて呼びかけたのが、「スーパーきのこの研究を始めよう」だった。始めた人はもちろんいません。当時は、きのこさえ全く未知の領域でしたので。それでもきのこ暦の2クール・16年待って、いよいよ清水の舞台から飛び降りたつもりで隔月刊MOOKきのこ13巻を出して特殊化進化したがる(変人やきのこおたくと呼ばれてまんざらでもないと感じる)人たちにもう半歩、あるいは1歩踏み出せばきのこを通して見えてくる前代未聞の一般化進化の世界の筋道が開けるよと促したのです。それで10指に満たない人たちが登場。それが目下のムックきのこクラブのメンバーたちの中の数名です。 僕の聖トポロジーのきのこ旅とは、いわゆるパワースポットや歌枕の地のみならず、映画館やアート展会場など、先人や同時代人の想像力のオ―ラが強烈な磁場を成してビシバシ伝わってくるトポス(場)に身を置いて、きのこ目を通して全身全霊で見聞きし、その共通体験を他日さまざまなアートや文学の形で表現し、21世紀のありうべき世界像(仮象世界)の軌道修正を力の限りつづけて行くといった法華経や唯識で言うところの一種の菩薩行を教団という背景を持たずにアーティスト一個人として貫くのです。このきのこ目を養う努力を続けるムックきのこの人たちとともに流動的なきのこそのものといった新しい文化の形をそれぞれの生活の中で築き上げていく協同事業。これこそがきのこシアター構想の中核部分です。 この地球、<もの>に対する執着こそが人生の目的と勘違いしている1%にも満たない人たちとそれにあやかろうとする人たちで満ちています。そんな人たちを静かに笑いとばしながら、自分もその世界の端くれで息づくものとしてちょっとだけ自分を勘定に入れたこだわらない生活の流れに乗っていくのです。大乗とはおおきな乗り物。今の日本は、それぞれが自身の<もの>に対する執着を満載したカチカチ山の泥の船状態。やがて沈むのは目に見えています。超宗教、実践哲学としての大乗、小乗の違いは、きのこと同じ地面すれすれの目線で捉えた無数の他者のよろこびのために生きるか、自己救済そのもののためにのみ生きるかの違いといって良いでしょう。
人牛倶忘の円相 いつか仰いだ極月の望月 円相を描きて茶のむ夢幻境 博子 釈迦と同じく瞑想による頓悟を目指す禅の思想を図解したものに南宋の廓庵(かくあん)さんが考案したイラストの十牛図がある。悟りの境地を牛にたとえ、旅人が牛を尋ねる10のストーリーで図示し、人が悟りを求め、悟りを得、さらにそれから後の人生を如何に生きるかを示したものだ。 1. 尋牛(じんぎゅう) 牛を求める。悟りの境地を求める状態 2.見跡(けんせき) 足跡を見つける。悟りはわが心にあると合点する状態 3.見牛(けんぎゅう) 牛を見つける。悟りの境地に近づいた状態 4.得牛(とくぎゅう) 牛を捕まえる。悟りの境地に達した状態 5.牧牛(ぼくぎゅう) 牛を飼いならす。到達した悟りが更に深まる状態 6.騎牛帰家(きぎゅうきか) 牛に乗り家へ帰る。悟りの境地を自分のものとした状態 7.忘牛存人(ぼうぎゅうそんじん) 人のみある。悟ったことすら忘れているが主体がある状態 8.人牛倶忘(じんぎゅうぐぼう) ただの円。主客を完全に超越した「空」の境地に入った状態 9.返本還源(へんぽんげんげん) 牛も人もなく梅花の咲く情景。「空」の絶対的静寂の状態 10.入鄽垂手(にゅうてんすいしゅ) 悟りの境地に安住せず人のために働く この第8図の人牛倶忘の「空」の境地はひとつの円で示される。これが過日、普茶きのこの会の闘句?ショウで池上博子さんの提出された生まれてはじめてつくった作品の円相である。人牛倶忘ののち10図にいたって大乗に特有の菩薩行が示される。 ここにいたって、菩薩が覚者となるための三阿僧祇劫という気の遠くなるような数字が何を物語っているかという僕の疑問を検討する地点にまでようやくのことで到達したことになる。人生ってすべてこんな展開だからあーあ、結構疲れます。 ムックきのこクラブは、隔月刊MOOK『きのこ』13巻の到達点を先へと誘う飯沢耕太郎さんの『フングス・マジクス』、小川眞さんの『きのこの教え』の登場を得て、スーパーきのこの世界へ旅立つ発酵期間を終えたことになる。どうか、僕の身ほとりを擦過するきのこファンの皆さまは、ご自身のスーパーきのこ人としての自覚をもって、地球の最底辺からの目線で他者のしあわせのために生涯を捧げてくださいませ。そんな人たちが力を合わせて築き上げる共同事業体を僕はこの9年とことん追求したいと思います。
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最終更新日
2013年01月11日 18時55分56秒
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