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カテゴリ:きのこの文化誌・博物誌
神戸映画サークル協議会の2月例会は、戦後70年の節目にふさわしい映画が上映された。コリン・ファーㇲ主演、ニコール・キッドマン、真田広之助演の第二次大戦末期の占領国側の日本軍がタイ・ビルマ間の鉄道敷設に強制労働に使役した英軍捕虜たちの戦後を描いたものだ。鉄道敷設は「死の鉄道」と言われるくらい過酷なもので、逆の立場でソビエトの第二シベリア鉄道BAMの強制労働に課せられた日本兵捕虜たちも同様である。 しかし、この映画はそれに関わった加害者・被害者が、それぞれ戦争犯罪の傷を抱えながら生きつづけており、その憎しみの連鎖を和解することにより断つというストーリーで、被害者で鉄道愛好家でもあった一英軍将校の実話の映画化だ。 ニコール・キッドマンのぬけるような白い肌と深い碧眼は、トラウマを抱えて苦しむ主人公の御杖(みつえ)となってさすらう、天照大神の倭姫のごとき巫女的存在としてふさわしい役柄を与えられていた。 わが国の天照大神も皇祖神であるとともにさすらう神であったことをあらためて思い出したことである。 この映画はかって「クワイ河マーチ」で一世を風靡した映画『戦場にかける橋』と同じタイ・ビルマ鉄道の強制労働に従事した英軍捕虜たちの物語を、まったく異なる人間的な視点で描かれた点が高く評価されるべきだ。わが国には、その収容所に従軍していた真田演じる日本兵憲兵同様の戦後をつらぬいた人物の厭戦映画として『ビルマの竪琴』がある。 戦後も70年経ち、戦後をついに招来できぬまま亡くなってしまった人達の声が後の世代に届かなくなってしまうに充分な時間だ。 誰もこの資源の乏しい極東の島国を悪くしようと思う人はいないし、現政権も必死に我が国の明日をよりよいものにしようと努力していることは理解できる。しかし、経済大国の夢と戦争加担は抱き合わせのものであるところに火だねがあることをしっかりと見据えてほしい。 昭和天皇崩御ののち、今上天皇・皇后は、父・天皇の遺志を引き継ぎ、ご高齢にもかかわらず大戦でかけがえのない命を奪われてしまった膨大な人達の慰霊にすべてを捧げていることに思いをいたそう。 今年はインフラ不備のためかって訪問断念を余儀なくされた日本領・南洋庁のあったパラオまで慰霊の旅に出られるという。専用機が着陸できず、ホテルでの宿泊ができないため船で寝泊まりするという、かってと同じ事情のもとでだ。かくまでしての慰霊。そこには、現下の日本の行く末に対して大いなる疑問を抱いてのことではないだろうか。 戦争を体験した人たちのそれぞれの戦後はまだ何も終わってはいないのだ。なのに戦前が目の前に来ていること。 戦後生まれの私は、戦中と戦後の架け橋をどうかけるかに今、無い智慧をしぼり頭を悩ませているところだ。 そんな意味でもこの映画は大いに参考になった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015年03月02日 00時43分04秒
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