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カテゴリ:ムックきのこクラブ
きのこの山に足しげく訪れるようになった30年ほど昔はこのベニタケの白色種ではシロハツが主勢でした。傘と柄の付け根がうっすら青いシロハツはヒダやや密で老成すると朝顔形になり、全体が白からうっすら黄土色に変わります。ところがその頃からヒダが極めて密なほかはシロハツと寸分違わないが青みを帯びない種類がちらほら出始め、やがて夏のシイ・カシ林での主役を果たすようになったのがこのシロハツに似て非なるシロハツモドキです。暑いさなかに菌輪を成してどっと出現するのでいやでもお付き合いする羽目になってしまう。粘性もなくつやもないシロハツもさして食用価値はないきのこだが、このシロハツモドキは本郷図鑑では「人によって中毒する」という限りなくグレーな毒きのこにされた。 私たちは仲間の神戸の山菜料理店で亭主がこんなのを持ち込んできたお客さんがいましたのでと出されたシロハツモドキを男3人、女1人で食べて女性一人だけが当たった。食べて数分後にむかつきを覚え、30分後には戻しはじめたらしく、一晩中それは続いたという。トイレに立ってしばらく戻ってこないのでようやくわかったのだが、胃腸系統の中毒症状で致命的ではない。同席した私たち3人の男たちは何ともなくいつものように飲んで食べて大いに盛り上がったものだ。さらに後日譚となるが、この話を東京の会員さんに話したところ、まさに同日、女2人、男2人でたまたまこのシロハツモドキを食べて、やはり女性2人だけが当たったというのだ。きのこの講師をはじめた頃の思い出だ。 シロハツモドキ Russula japonica このきのこは、種小名にジャポニカがつく日本固有種とされてきた。シロハツ、シロハツモドキ、いずれのきのこも少しにがからい味わいのきのこで、無毒の方のシロハツもさしておいしくないが、その白ずくめの優美で繊細ないでたちから(=デリカ) R.delica と名付けられている。ヒダの密なことが繊細さを連想したのかもしれない。 この女性だけを中毒させたシロハツモドキの毒性はいまだに不明のままである。これだけ科学が発達した現代でもきのこの毒はなかなか特定できないのも事実である。地球最後の野生生物であるゆえんだ。そんなこともあって私にとっては忘れがたいきのこの思い出となった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018年07月21日 21時03分56秒
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