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まーどれ そりてーら

まーどれ そりてーら

赤道の太陽

 明日の夜は、バスの旅だ。
みどりは、自分のブログをチェックしながら頭の中でひとりごとを言っていた。
 みどりはもう40半ば、半分の人生を終えている。が、まだ先の見えない不安の中を行ったり来たりしている。しかも1人じゃなく、2歳になる娘と、外国それも南米と言う、生活習慣も言葉も生き方も、全て違う環境で。

 娘は喜ぶだろうか?海で始めて遊ぶ、お風呂は大好きだけど、お風呂とは較べられない大きな空間で、彼女は何を考え何を得るだろうか?

 娘の1歳の誕生日は、San Franciscoで、生まれる少し前から住むことになったレジデンスで、留学時代の友達、先生、そしてこのレジデンスの住人達とそれはそれは賑やかなパーティーを、祝福を、受け取った。その後日本に行き、血の繋がる人達と対面できた。
 2歳の誕生日。
それは寂しい1日だった、みどりは娘にケーキも作ることはなかった。毎日ケーキを焼いているにもかかわらず。売れ残ったケーキを切り分け、それでも娘はケーキを見て食べて、喜んでいた。まだ意味が解らないとはいえ、特別な日なんだと心に感じることをしてあげられない、この痛みをみどりは感じていた。
 何かしてあげたい。。。

 そうだ海に行こう!
San Franciscoの冷たい海じゃなく、南米の熱い海を見せてあげよう。

San Franciscoの海は激しく冷たい海だった。まだ1歳の娘は息もできないくらい激しく吹く風の中、海を見据えていた。自然の圧倒的な力にねじ伏せられないで、魅入られてでもいるように。

みどりはこの海が気に入りつつ、でも自分のいる場所じゃないと感じていた。海を見るのは好きだが、この海は荒く心まで吹き飛ばされてしまいそうだ。まだ普通の人生を生きれると信じていた頃、新婚旅行で行ったハワイの海。穏やかで透き通った水、砂浜も美しく、だけど人工の施設が林立するそんな海の側で暮らせたら。。。そんな気持ちを、日本人の普通の感覚を持った当時の夫に話すと、笑われた。


みどり自身南米で海を見た経験がなく、熱いのか寒いのか穏やかなのかどうなのか本当のところはわからない。ただ人伝えに聞いた話を思い浮かべてイメージしている。

マナビ。。。
娘の父親であるエクアドル人と、エクアドルで初めて娘と3人で食事をしたレストランの名前。このレストランでマナビと言うエクアドルでは有名な海の町を知った。食べたもの自体は、日本人からすると大したことは無い、海産物の料理だった。娘を交えて食事をすることに、感動したのか、この町の名前は胸に刻まれた。店の壁にはマナビのリゾート地の写真が、展示されていて、「ここはエクアドルで最も美しい海があるんだ。料理も旨いし、料理上手な人が多いんだ」と説明を受けた。「いつか行ってみたい。。。」みどりは思った。会計のとき、エクアドルの物価から考えて、かなり高い料金だったためこのエク人は、かなり払うのを渋り、みどりが少し財布から紙幣を足した。寂しい思いを消すのにかなり時間をかけることになった。

みどりは、その後も何人かマナビ出身のエクアドル人と知り合い、この土地の人の気質を知る事になった。明るいが、短気で、誇り高く、男はかなり封建的。そして今でも喧嘩のときはマチェテという大刀を持参することがあると聞く。感情的な人間が多い町。

あるきっかけから、22歳の青年、マナビ出身のDavidoを知った。当初彼はみどりにエンパナーダを卸していた。



 


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